地球は巨大な「磁石」
【地球は一つの大きな磁石である】
16 世紀、イギリスの医学博士ウィリアム・ギルバートは研究や実験を通してそう結論付けました。
この「地磁気」についてはまだまだ未解明な部分も多いようですが、日々の調査や研究の積み重ねによって少しずつその詳細が明らかになってきています。
地磁気は地球内部の外核で液体のニッケルと鉄が流動することによって発生するとされており、生成された地磁気は地球全体をスッポリと包み込むことによって有害な宇宙線などから我々をガードしてくれています。(画像 1 ~ 3)
減少し続ける地磁気(磁場)
地球上のあらゆる事象に大きく関与してるとされる地磁気ですが、ここ 200 年のデータから急ピッチで減少していることがわかっており、仮に今のペースで減り続けばあと 1000 年で消失するといわれています。
※ グラフ 気象庁地磁気観測所公式サイトより
地磁気(磁場)の生物への影響
現在では各種研究も進み、渡り鳥、ミツバチ、イルカ、など一定の生物には地磁気を感知するための器官であろうとされる “体内磁石” の存在が確認されています。
我々「ヒト」は地磁気を感知するセンサーこそありませんが、ちょっとした知恵や小さなコンパスさえあれば方角に迷うことはありません。
ただ、善しにつけ悪しきにつけ、地磁気が生態系にどういった影響を与えているかはまだまだ未解明な部分が多く、更なる研究やデータの積み重ねが必要とされています。
地磁気逆転(磁場逆転)とは
ところで「北」が「北」であるのは果たして地球誕生から続く不変のことなのでしょうか。
実はそうではありません。
「地磁気逆転(磁場逆転 または ポールシフト)」といわれ、地球の磁場は太古より北と南をコロコロと入れ替えてきました。
現在判明している直近の反転劇は 約 77 万年前とされているので、当然誰も経験したことはなく資料なども残されておりませんが、世界各地で地質調査や研究などを繰り返すことにより少しずつその詳細が明らかになりつつあります。
「千葉セクション」ともいわれ、77 万年前の逆転を証明する地層が日本の千葉県、養老川沿いで発見されました。
※ 写真: Wikipedia より
それにちなみ、約 77 万年前 ~ 13 万年前の地質時代が「チバニアン」と命名 され、2020 年 1 月には国際地質科学連合の会合により正式承認もなされました。
【参考動画】 (ANN NEWS)
〖「チバニアン」 地質学上の時代名に正式決定(20/01/17)〗
地磁気逆転(磁場逆転)のサイクル
太古からの長いスパンでみると平均 20 万 ~ 30 万年ごとに逆転劇を繰り返してきたようですが、4000 万年逆転しなかった時期もあれば、300 万年に 78 回(平均の約 5 倍)も逆転した時期もあって、サイクルに安定感はないようです。
これについてもいまだ原因は解明されておらず今後の研究課題のひとつでしょう。
ちなみに約 589 万年前 ~ 現在に至るまでの正逆の磁極期は大きく 4 つに分類され、それぞれに著名な研究者の名が冠されております。
ギルバート期(ウィリアム・ギルバート) ➡ 約 589 万年前 ~ 358 万年前
ガウス期(カール・フリードリヒ・ガウス) ➡ 約 358 万年前 ~ 258 万年前
松山期(松山基範) ➡ 約 258 万年前 ~ 77 万年前
ブリュンヌ期(ベルナール・ブリュンヌ) ➡ 約 77 万年前 ~ 現在
松山基範(まつやま もとのり) 氏 とは
地磁気逆転(磁場逆転)の開始から完了に至るまで
通常は 1000 年単位のゆっくりしたスピードで逆転するとされていますが、2014 年の研究発表で、前回の逆転は約 100 年で完了したということが明らかにされました。
ある朝起きたら北と南が逆転していた、などということはまずありえないですが、地球史レベルからすると 100 年というのは超高速といえるでしょう。
地磁気逆転(磁場逆転)が生命体に何らかの悪影響を与えるとするならば、この反転スピードは間違いなく脅威といえます。
逆転途中における地磁気(磁場)の消滅
地磁気は逆転の課程において減少を続けていき、ある一定期間は完全に消滅するとされています。
台風に例えるならば「目」に突入したようなものでしょうが、台風の場合とはちがって地磁気逆転についてはこの期間が最も危険だといえましょう。
地球の磁気シールドが消失することによって有害な太陽風や宇宙線をまともに浴び、生命体は絶滅に近い深刻な影響を受けるだろうと多くの専門家は論じています。
とはいえ、生命体に有害な放射線などはその大半が分厚い大気に吸収されるため深刻な影響には至らないだろう、といった一部意見もあり、見解の統一はみられません。
ただ、磁気圏の性質が変化することによる気候変動など間接的に受ける影響の大きさについては異論がないようです。
最後に
まだまだ謎が多く調査研究の積み重ねが必要な分野ですが、最新の発表では、外核とマントルの境界付近(マントル下部〔上画像矢印〕)に存在する特殊な岩石層に地磁気逆転の原因をみる有力な見解が示され、メカニズム解明に向け大きな期待が寄せられています。
「もう逆転が始まっている ! 早急に対策を !」
「いや、地磁気の減少は単なる一時的現象だ ! 差し迫った状況ではない !」
46 億才のアバウトな大御所に知性豊かな面々が振り回されております。
すぐ下の地震や噴火の予知すらままならないのに地球の中心で起こることなどそう簡単に予測できるものではないのでしょう。
「灯台もと暗し」ってわけではないですが、遥か遠い宇宙のことよりも足元を理解する方が我々にはずっと難しいのかもしれませんね。
【参考動画】
〖世界不思議大全 地磁気逆転の謎〗
〖【Science News 2016】近づいている? 地磁気逆転 〗
〖緊急警告!! 地磁気逆転迫る!! MUTube(ムーチューブ)2019 年 7 月号〗
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