はじめに
スーパーやコンビニなどに行くと、美味しそうに色付けられた食べ物や飲み物が所狭しと並べられています。
そして、イチゴ味には赤やピンク、ブドウ味には紫といったように、あらゆるものに対してそれに見合った色の「着色料」が使用されていることもよくご存知かと思われます。
ただ大半の方が、人工的に作り出されたものが「合成着色料」、天然素材から抽出されたものが「天然着色料」、などといった大まかな認識しかなく、「コチニール色素」なる表示を目にしてもなんら気にもとめないのが現実ではないでしょうか。
コチニール色素の原料元
コチニール色素の提供者、それはズバリ、“虫” です。
アステカ王国やインカ帝国といった古き時代より、衣服や装飾品の赤系染料として用いられてきた「コチニールカイガラムシ(エンジムシ)」の色素が、なんと今現在でも “動物由来の天然着色料” として、食品、医薬品、化粧品など広範囲にわたって使われ続けています。
コチニール色素の主たる色素成分は、水溶性、耐熱性、耐光性、に優れたカルミン酸といわれるもので、「カルミン酸色素」と表記される場合もあります。
よく知られる飲料、「ファンタグレープ」や「ファイブミニ」などにも以前は当色素が使用されておりましたが、現在は他のものに切り替えられております。
品目ごとの具体的表示名
- 【医薬品】の “添加物” として ➡ 「コチニール」「カルミン」「カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン」「カルミン被覆雲母チタン」
- 【医薬部外品】の “成分” として ➡ 「コチニール」「カルミン」「カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン」「カルミン被覆雲母チタン」
- 【化粧品】の “成分” として ➡ 「コチニール」「カルミン」「カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン」「カルミン被覆雲母チタン」
- 【食品】の “原材料名” として ➡ 「コチニール色素」「カルミン酸色素」「着色料(コチニール)」「着色料(カルミン酸)」
コチニールカイガラムシ(エンジムシ)の生態
コチニールカイガラムシ(エンジムシ)とは、ある特定種のサボテンに寄生する虫で、体長 3㎜ ほどのメスの成虫のみが染料として利用されます。
メキシコや南スペインなどいくつかの地域で養殖されていますが、シェアの 90% 以上が南米のペルー一国によって占められているそうです。
※ 画像 Wikipedia より
メス(画像上)➡ 羽がなく、一度サボテンに住み着くと剥がれなくなり、樹液を吸いながら3ヶ月程度生きるそうです。
オス(画像下)➡ メスよりもかなり小さく、羽があり飛ぶことができます。
オスは生まれつき口がなく、「食べる」という行為ができぬまま交尾を終えるとすぐに死んでしまうそうです。
同じ男として涙がこぼれます。
※ 画像 Wikipedia より
コチニール色素(カルミン酸色素)の安全性や危険性
天然着色料=体に害はない、というのが一般的な思い込みかと思われますが、各種研究や実験データなどから、コチニール色素に「急性アレルギー反応(アナフィラキシー)」の原因物としての指摘がなされており、中には呼吸困難など重篤な症例報告もあるようです。
コチニール色素によるものと見られるアレルギー反応は、20 代 ~ 50 代の女性に多いらしく、海外製の化粧品(口紅やアイシャドー)や輸入食品による発症がほとんどのようです。
国内製の食品に関しては、タンパク質含有量(いわゆる虫そのものの成分)の低減化処理が進められていることもあって、アレルギーのリスクは少なくなってきているといわれています。
こうした状況を重く見た消費者庁は、2012 年 5 月、「コチニール色素に関する注意喚起」といったものを発信し、それを元に厚生労働省からは、症例報告などを徹底させるよう関係各方面に対し通知書が発せられました。
色素抽出の行程で、タンパク質を完璧に取り除くことは難しいらしく、これがアレルギーの原因だと考えるのが主流とされていますが、一方でタンパク質をほとんど含まない高純度のカルミン酸を用いた実験でもアレルギー発症の可能性が示され、正確なとこはいまだはっきりしていないようです。
人間に何ら害を及ぼすわけでもなく、ただ赤い色を提供するためだけに命を奪われ続けてきたコチニールカイガラムシの怨念によるものかもしれませんね。
昔、回転寿司なんかでよく口にしたであろう「人工イクラ」。
「天然着色料」を使用してたってことですが、“コチニール色素” だったのかどうなのかが今さらながら気になります。
「人工イクラ」って何? てな方は以下記事でどうぞ。
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