【はじめに】
- 仕事などで日々肩に負担をかけている。
- 肩を回すと痛い、または痛くて回せない。
- 肩こりに似た不快な違和感が続いている。
などなどに心当たりのある方はご注意を。
四十肩や五十肩などではなく「石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)」の可能性も大ありです。
不意に襲われた肩の激痛
「歳も歳だし、我慢するっきゃないか…」
肩の異変を勝手に年齢のせいだと思い込み、市販の湿布を貼ったり飲み薬を飲んだりしながら通過儀礼の一つとして諦めていたワタクシ。
不快な痛みとコリを抱えながら半年ほど経ったある日、突如これまでとは比較にならない恐ろしい激痛に襲われた。
指先で肩にチョン、と触れただけで飛び上がるような激しい痛み。
肩を少しでも動かす動作はまったく不可能となり、両手を必要とする日常生活は、ほぼできなくなりました。
トイレでの一連の動作も残された片手でしかできず、汗を流しながら四苦八苦です。
動く方の手が利き腕だったらまだよかったのですが、そうじゃなかったからホント最悪です。
女性なら料理や化粧もままならず、ドライヤー片手に髪のセットなど夢物語でしょう。
「間違いなく石灰沈着性腱板炎ですな。検査体制の整った大きな病院をご紹介しましょう」
駆け込んだ近所の町医者にそう告げられたワタクシは、レントゲン写真と紹介状を手に、そのままタクシーで大病院へ急行するハメに。
タクシーがゆっくりハンドルを切るだけでも肩に激痛が走ります。
手にしたレントゲン写真には、まるでキノコ雲のようなアヤシイ影が…(写真参照)
「石灰沈着性腱板炎ですね」
診察室に通されるや否や、レントゲン写真を眺める先生がそう言った。
町医者の診断通りであった。
「ほとんどの方は眠ることもできないと、血相変えて飛んで来られるんですよ」
権威あるらしい先生がそう言って苦笑した。
症状そのものは珍しいものでもなく、腕や肩に過度な負担をかけ続けていると発症しやすいそうである。
レントゲンを撮ると上腕骨のすぐ上に怪しい白い影がはっきり写るため、すぐに判別できるとのことだ。
いったいどんな病気 ?(医師の解説動画付)
石灰沈着性腱板炎…
難しい病名ながら読んで字の如し、「石灰(リン酸カルシウム結晶)」が「腱板」に「沈着」して「炎症」を起こすもので、傾向的には中高年女性に多いそうである。
何らかの原因で「石灰(リン酸カルシウム結晶)」が腱板内部に出現し、それが腱板内の一定の場所(滑液包)に進入してしまうと、一気に炎症が起き、激痛を生じさせるらしい。(下図参照)
時間とともに 液体状 ⇨ 粘液状 ⇨ 固形(粉)状へと変化していくそうで、いかにしてそのようなものが体内で精製されるのかは未だ不明だそうである。(命にかかわる深刻なものでもないため、これと真剣に向き合う研究者がいない… との説も)
一見単純そうな作りに思える「肩」ですが、図のようになかなか複雑な構造をしており「どうなってんだ ??」って感じでしょう。
「腱板」とは簡単に言えば、肩周辺の 4 つの筋肉(棘上筋〈きょくじょうきん〉、棘下筋〈きょくかきん〉、小円筋〈しょうえんきん〉、肩甲下筋〈けんこうかきん〉)の端っこが、肩の丸い部分にギュッと寄せ集まった、4 層からなる「筋」をいいます。
それら 4 つの筋肉が正常に動き、腱板も正常に動くことによって、初めて肩が軽快に動くんだそうです。
痛みさえなければ…
診察の流れ
1 レントゲン撮影。
2 問診を兼ねながら腕の可動範囲、痛みのレベル等を入念にチェック。
3 局所に直接麻酔を注射。(一時的とはいえ劇的に痛みが消える)
4 石灰の吸引を試みるため注射をブスリ。すでに固形化しており吸引断念。
液体状にある初期段階にのみ有効ですが、完全に固形化していなければ、このようにうまく吸い出される場合もあるようです。
5 飲み薬と湿布薬を処方するとのことで、1 週間程度様子を見るように言われる。
「このまま様子見ろってか ⁉」
てな感じで、麻酔が切れたら再び激痛に襲われるのではないか、と不安一杯でしたが、結果的には処方してもらった痛み止めと湿布薬の併用でそのままテンポよく完治いたしました。
先生曰く、沈着した石灰は時間とともに再び体内に吸収され、痛みも普通なら 1 ~ 2 週間程度で治まる、とのことである。
ただ、痛み止めが切れる度に同様の激痛を繰り返す場合は「腱板損傷」も考えられ、その場合は、更なる綿密な検査と手術やリハビリも視野に入れた新たな治療が必要になるようです。
ちなみに「腱板損傷」はレントゲンでは判らないため、超音波検査や MRI 検査など別の機器によって判断されます。
何はともあれ、肩に不穏な違和感や痛みを感じた時は、四十肩や五十肩だと決めつけず、まずはお近くの整形外科でレントゲンを撮ってもらいましょう!
【専門医による解説動画】
〖石灰沈着性腱板炎 肩に石灰ができる病気。なりやすい人や治療法について医師が解説します〗
コメント