日本の「食品ロス」の実態
「フードバンク」を語るにあたって、まず知って頂きたいのが我が国における「食品ロス」 の実態。
2020 年現在、厚生労働省の調査によると、国民の 6 人に 1 人、そして18 歳未満の約 16% が「生活困窮者」とされています。
そのほとんどの世帯では月 10 万円未満の収入しかなく、今日明日の食べ物を手に入れることすらままなりません。
そして、一方では「傷がある」「形が悪い」など様々な理由から、問題なく食べれる(飲める)にもかかわらず、毎年 600 万トン以上もの食品が廃棄されています。
これがいわゆる「食品ロス(フードロス)」と言われているもので、わが国においては年間食品廃棄量の実に 3 分の 1 にも及び、これはコメの年間生産量とほぼ同等の量にもなるそうです。
まだ食べれるものがこれほどあるにもかかわらず、それを必要とする人達に享受されない
これが “豊か” とされる日本の今の現状です。
“自分には無関係” であっても、先行き不透明な今の世の中、いつ誰が同じ状況に陥ってもおかしくはないでしょう。
他人事とは思わず、いま一度「食べ物」の在り方についてじっくり考え直す時かもしれません。
意外と知らない「賞味期限」 と 「消費期限」のちがいとは
「アタタ… すっかり忘れてた !」
冷蔵庫の奥より期限切れ商品が出現。
もったいないと思いつつも、あなたはゴミ箱へポイッ。
一般的によくあることかと思われます。
しかしその商品、捨てる前にいま一度期限表示を見直してみましょう。
もし「“賞味” 期限 」となっているのであれば、そのほとんどがまだ問題なく食べれます。
賞味期限とは「商品を美味しく食べれる(飲める)期限」といった、微妙に曖昧な定義なのです。
賞味期限切れの商品をあえて低価格で販売している店舗やネットショップなどもあり、当然法律上も何ら問題はありません。
ニオイや色などから異変さえ感じなければまず口にしても大丈夫でしょう。
このような、ちょっとした認識不足を改めるだけでもわが国の「食品ロス」といったものはかなり改善されるはずです。
そしてさらに知っていただきたいのが、廃棄される運命の食品を、食べ物に困っている人達に届けるためのシステムや活動が日本中のいたる所に存在するということです。
当初は馴染みの薄かった「フードバンク」や「フードドライブ」といった言葉も、今ではメディアなどで頻繁に取り上げられるようになり、聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。
※ ちなみに「“消費” 期限 」とは、正しい保存方法を守ったうえで食べたり飲んだりしても安全とされる期限で、こちらは期限が過ぎれば処分すべきでしょう。
「フードバンク」及び「フードドライブ」とは
「フードバンク」とは、食品関連企業や農家などから、あるいは「フードドライブ」(下記参照)などを通じて個人などから寄贈された「まだ問題なく食べれる(飲める)食品」を、それを必要とする人達に “安全に正しく無償で” 届ける公益のシステム、または団体のことをいいます。
画像:フードバンク京都 HPより
※ 「フードドライブ」とは、家庭の不要な食品を近くの収集拠点に持ち寄る個人レベルの活動をいいます。
「フードバンク」が活動の一環として直接運営していたり、またはスーパーなどがお互いに協力しあって各店内に回収拠点を設けたりと様々な形態があります。
(写真は筆者地元スーパーでのフードドライブ活動)
【参考動画】
〖フードバンクはりま 食品ロスを減らそう そして 余った食品を困っている家庭へ〗
フードバンク団体の概要、連絡先 等
2023 年 5 月末の時点で、わが国では 233 のフードバンク団体が集計されており、農林水産省 HP 内の「各フードバンク活動団体の紹介」において、それぞれの連絡先や活動概要などが細かく記されております。
中でも東京、埼玉、神奈川を主なエリアとする「セカンド・ハーベスト・ジャパン」は日本初のフードバンク団体であり、法人として 2002 年の活動開始以降、フードバンク全体の牽引役として様々な実績を残してきました。
また、2013 年には別法人として「日本フードバンク連盟」を立ち上げ、〖フードバンクガイドライン〗の管理徹底や、団体への助成、衛生管理監査などを通じて健全なフードバンク活動の普及に努めています。
日本フードバンク連盟は、いわばフードバンク団体の総本山的な役割で、連盟の認証を受けることによって、各団体の信頼性もより一層高いものとなりえます。
※ 連盟への認証申請や、寄付の送金、各種問合せなどは上記サイトからすべて可能となっております。
尚、もよりの団体などへ食品の提供や寄付をご希望される方は、上記 “農林水産省 HP” 内の連絡先から直接のお問い合わせも可能です。
「食品ロス削減推進法」の成立によるジレンマ
食品ロスへの社会的関心が高まりゆく中で、2019 年、「食品ロス削減推進法」といったものが可決成立いたしました。
これは “食品ロスの温床となってきた制度等を見直して食品ロスを減らそう” といった社会的意義の高い法律ではありますが、当法律の施行後、スーパーマーケットなどでは “3 分の 1 ルール”(上画像参照)といったものが廃されたり、また、販売期限切れや賞味期限切れといった商品の再販ルートが確立することなどによって、「困窮者にとって必要性の高い商品(企業が再販しやすい商品)」の寄贈が減り、「困窮者にとって必要性の低い商品(企業が再販しにくい商品)」の寄贈が増えている、といった悩ましき問題が浮上しているようです。
「食品ロスの削減」と「フードバンクシステムの充実」
この微妙なバランスを今後どう保っていくかが、行政、企業、フードバンク団体のすべてにおいて今後の大きな課題ともいえましょう。
最後に
【すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する】
日本国憲法第 25 条第 1 項、「生存権」の条文です。
この条文を具現化するもののひとつとして、わが国には「生活保護」といった制度が存在しますが、些細なことから支給条件を満たさず育ち盛りのわが子に最低限の食事すら与えられないご家庭が数多くあります。
これからの社会を担う子供たちに満足な食事すら与えられないようで日本の未来などはありえません。
「生活困窮者自立支援制度」の開始(2015 年)とともに各自治体には支援窓口が設置され、それに伴ってフードバンク活動も大きく幅を広げつつはありますが、世間の認知度が高まったかというと決してそうではないでしょう。
一番の問題は…
『フードバンクといった制度を必要とする方々が、はたしてどこまでこのことを知っているのか ?』
ということです。
積極的な食品提供と併せ、あなたのお近くに「もしかしたら…」と思わせる方がいらっしゃったなら、こうした救済制度があることをそれとなくご案内差し上げて下さい。
この制度を維持拡大していくためには国民一人一人の協力が何よりも不可欠かと思われます。
もちろんあなたご自身も、今後万一生活難や食料難に陥るようなことがあれば、何はさておき真っ先に最寄りの「フードバンク」に登録して生きるための食料をしっかりと確保いたしましょう。
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