【はじめに】
“雪の壁” や “黒部ダム” など壮大な風景が自慢の「立山黒部アルペンルート」(下写真 1 ~ 3)
“秘境” や “温泉” をトロッコ列車で巡る「黒部峡谷鉄道」(下写真 4 ~ 6)
旅好きの方ならおそらくどちらもご存知でしょう。
しかしながら、旅のプランをたてながら「近くて遠い」これら 2 ヶ所に頭を悩ませる方もずいぶん多いのではないでしょうか。
開通決定した富山県の新ルート「黒部ルート」/いつ開通?どこからどこをどんな乗り物で結ぶ?
なぜ「近いのに遠い」のか。
それは、“一般観光客” が 2 つのエリアを行き来できる手段がほぼないからに他なりません。
トンネルにせよ登山道にせよ、“ルート” そのものは以前より存在しますが、それらは設備関係者や公募当選者、あるいは上級登山者など一部のヒトのみが通行可能なもので、通常の観光客はもう一方の目的地まで、時間とお金と労力をかけて大きく迂回せざるを得ないのが現状なのです。
とりあえず、上級登山者向けの殺人ルート(参考動画) はさておき、本記事は、
「これまで一部のヒトしか通行できなかった “黒部ルート” (上地図の赤ライン)が、2024 年以降は多くのヒトが通れることになりそうですよ~」
なるお話しです。
地図の苦手な方も、「立山黒部アルペンルート」と「黒部峡谷鉄道」といった 2 大スポットを巡るのに、この赤ラインがどれだけ重要かは見た瞬間にお分かりになりましょう。
「立山黒部アルペンルート」と「黒部峡谷鉄道」を最短でつなぐ “黒部ルート” の一般開放は、観光収入のさらなる UP も期待されることから、かねてより富山県の悲願でもありました。
〖黒部ルートに関する協定の締結について〗(2018 年 10 月 17 日 プレスリリース)
「黒部ルート」(関電ルート) の各種乗り物 等
“黒部ルート” とは、黒部川上流にある「黒部峡谷鉄道」の終着駅、「欅平 」(上図左下)を始点として、約 17㎞ 先の黒部ダム(上図右上) に至るまでの、主に保守・運営関係者などだけが利用できる関西電力専用のルートです。
昭和 14 年の、“黒部川第三発電所” の建設のために掘られたトンネル(ここの一部区間が、有名な “高熱隧道”)と、昭和 33 年の “黒部川第四発電所” の建設のために掘られたトンネルとで構成されていて、個性的な乗り物たち(下写真)を乗り継ぎながら、どちらからでも行き来できるようになっています。
※ 地図に “水平歩道” や “旧日電歩道” とあるのは水力発電所建設に伴ってつくられた前述の殺人ルートで、雪と整備の関係上、通行可能なのは秋の 1 ~ 2 ヶ月だけだそうです。
毎年何人もの方が転落死されているとか…
【参考資料】
関西電力 「黒部ルート旅行商品化にかかる安全対策(案)について」pdf
ちなみに平成 8 年からは、抽選形式で定期的に “黒部ルート見学会” なるものが催されており、小学生から大人に至るまで絶大な人気を博しております。(下に参考動画あり)
申し込み方法等詳しくは、関西電力「黒部ルート見学会のご案内」まで
【参考動画】(HAB スーパー J チャンネル 2017.-6.-5放送)
「黒部ルート」(関電ルート)の今後の課題
待ちに待たれた “黒部ルート” の一般開放ですが、数々の難工事を経てきた危険極まりないトンネルだけあって、やはり気になるのは 「安全性」に他なりません。
【落盤対策のさらなる強化】
【移動車輌の緊急停止システム導入】
【避難経路や設備の抜本的見直し】
などは必須です。
多数の一般人が連日訪れるとなれば、既存の保全マニュアルなどもすべて見直さなければならないでしょう。
最後に
“一般開放” とはいえ、年間 100 万人近い「立山黒部アルペンルート」の観光客が、高低差の激しい狭いトンネルにワンサカ押し寄せても物理的に対応できないことは明白です。
一応 “協定内容の骨子” にて、富山県と関西電力の大まかな役割分担などは発表されましたが、紙一枚だけのペラペラな内容でまだ何も決まってないに等しく、受け入れ対象者や集客の仕方、料金形体やその徴収方々など、まだまだ煮詰めるべき課題は山積みといえるでしょう。
また、実際に運営するとなれば予算も人員もこれまでと同じようにはいかないはずで、そうした細かな点を両者がどう折り合うかによって、当計画の成否が大きく分かれるのではないでしょうか。
利用者、運営者、自治体のすべてが〝WIN WIN WIN〟となれるようなゴールデンルートを目指してぜひ頑張ってもらいたいものです。
富山県の発表によれば、通称 “黒部ルート” の正式名称(旅行商品名)が一般公募の結果「黒部宇奈月キャニオンルート」に決定されたとのことです。
詳しくはコチラ〖富山県地方創生局観光振興室 HP〗にて。
【開通延期の知らせ / 富山県地方創生局 観光振興室 HP より転載】
〚2024.05.27〛
黒部宇奈月キャニオンルートについては、令和6年能登半島地震による落石で黒部峡谷鉄道の鐘釣橋が損傷したため、黒部峡谷鉄道の全線開通が令和6年10月1日頃を目指すとされていたことに伴い、10月1日頃に開始することとしていました。
しかしながら、本日、黒部峡谷鉄道株式会社から、雪解け以降の詳細な現地調査の結果、落石防止対策等の復旧工事が当初の見込み以上に時間を要し、令和6年シーズンは全線開通ができない状況となった旨の発表がありました。これを受け、黒部宇奈月キャニオンルートも、令和6年中には開始できないこととなりました。
黒部宇奈月キャニオンルートの一般開放・旅行商品化の開始をお待ちいただいていた皆様には度重なる延期となり、大変申し訳ございません。ご理解賜りますようお願い申しあげます。
令和7年以降の黒部宇奈月キャニオンルートの一般開放・旅行商品化の開始日及び旅行商品の販売開始日につきましては、黒部峡谷鉄道の全線開通の時期が示された段階で改めて決定し、ご案内いたします。
【関連動画/ANNnewsCH】
〖新観光ルート「黒部宇奈月キャニオンルート」全線開通 今年は断念 富山(2024年5月28日)〗
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