【はじめに】
日本では、古来より生息している “トウヨウミツバチ(ニホンミツバチ)” と、明治時代以降に海外から流入した “セイヨウミツバチ” が養蜂として利用されており、基本的な生活スタイルは両者とも似通っています。
ひとつのコロニー(巣)は、1 匹の女王バチ、数万匹のメスバチ(働きバチ) 、数百匹程度のオスバチ 、で構成されており、そのすべてが女王バチと血のつながりを持つ巨大なファミリーです。
女王バチを頂点としたその集団生活は効率重視の極めて秩序立ったものであり、ある意味非情な世界だといえるかもしれません。
女王バチの生態 / 女王バチと メスバチ(働きバチ)・オスバチ との関係
女王バチの役割は交尾と産卵のみに特化され、幼虫の世話、巣の修繕、ミツの収集など、仕事という仕事はすべてメスバチ(働きバチ)の役割となります。
春先にだけ出現するオスバチは、タダメシを食らって巣の中をウロウロするだけで、仕事らしい仕事は何もしません。
そのタダメシですらメスバチから口移しで食べさせてもらい(というか自分では食べることができません)、一見ウハウハなハーレム生活を謳歌しているかにも思えますが、彼らには非情な結末が待ち受けています。
女王バチのお引越し(分蜂)
女王バチ候補を産むのも、もちろん女王バチです。
女王バチは、死ぬまでひたすら卵を産み続けますが、1 日に 1000 個も 2000 個も卵を産み続けていれば、当然ひとつの巣にすべてのミツバチが収まりきれなくなります。
こうなると女王バチは “王台” といわれる特別室に女王バチ候補の卵を産みつけ、自らは新居を探すため半分程度のメスバチを引き連れて巣から出ていきます。
主に春から夏にかけてなされるこの行動を “分蜂” といい、快適な新居が見つかるまでの一定期間は木の枝などに身を寄せあい、大きな “蜂の球” となって過ごします。
分蜂のシーズンになると巨大な蜂の球に恐れをなして通報が相次ぐとか。
見た目はギョッとしますが、分蜂中のミツバチはしっかりと栄養も蓄えられていてとてもおとなしいらしく、よほどのことがない限り襲ってくるようなことはないそうです。
女王バチの交尾と産卵
女王バチは、羽化して1 週間くらいすると交尾のため巣から上空へ飛び出し、その誘惑フェロモンを感知して飛び出してきた “他の巣” のオスバチ数匹と空中にて交尾します。
自分の巣のオスバチ達はすべて “身内” なのでイケナイ行為はいたしません。
女王バチの交尾は一生涯にこの一度きりで、残り 3 ~ 5 年の寿命期間は、この時に得た精子を体内で巧みにコントロールしながら毎日 1000 個も 2000 個も卵を産み続けます。
驚くことに、女王バチはオスバチとメスバチを必要に応じて産み分けすることができます。
体内で卵子に精子を受精させ、その “受精卵” を産みつけると 100% メスバチが、精子を用いず “無精卵” を産みつけると 100% オスバチが産まれるといった仕組みになっているのです。
つまりオスバチには父親といったものは存在しません。
女王バチが産みつける卵のほとんどはメスバチ(働きバチ)を作り出すための “受精卵” で、春先にだけオスバチ専用のベッドルームに一定数の “無精卵” が産みつけられるといった具合です。
オスバチの役割(存在意義)
“オスバチ” の役割は、他の巣の女王バチに一回ポッキリ精子を提供する、ただそれだけです。
射精後は生殖器がちぎれて即死するそうですが、この王道を全うできるオスバチはほんの一握りにすぎません。
交尾のシーズンを終え、すべての女王バチが巣に引きこもれば、残されたオスバチ達はもはや何の役にも立たない単なる邪魔者です。
メスバチ達に巣から追い出され、そのまま飢え死にする運命となります。
生まれ変わってもミツバチのオスにだけはなりたくありません。
女王バチの一生
ミツバチが増え続けて “分蜂” の時期(春~夏)が迫ってくるか、もしくは寿命による女王の死期が近づいてくるとメスバチ達によって “王台” が作られ、女王バチはそこにメスバチ用の “受精卵” を産みつけます。
メスバチの卵はすべて同じ遺伝子なので、産みつけられた場所が王台かそうでないかだけで、生まれた赤ちゃんの将来は大きく変わることになります。
王位継承者が確実に現れるよう王台は複数個作られ、卵も王台の数だけ産みつけられます。
とはいえ、ひとつの巣には一匹の女王バチ以外必要ありません。
王座を賭けたオンナの戦い
ほとんどの場合、最初に羽化した女王候補が他の女王候補のサナギをすべて殺してしまい、王座を獲得するそうです。
たまたま他の候補と同時に羽化した場合は、一方が死ぬまで毒針を駆使したオンナの戦いが繰り広げられることになります。
女王になればあとは一生産卵のみ
ライバルたちを蹴落として晴れて頂点を極めた女王様も、その後はと言うと、死ぬまでの 3 年 ~ 5 年ただただ産卵することだけに一生を捧げなくてはならぬ、言わば “生産マシーン” のごとき哀れな存在でもあります。
オスバチ同様 “食べる” といった基本的な行為も自分自身ではできず、“世話係” なしでは生きていくことすらできません。
女王様の側近「ロイヤルコート」
女王様の周囲には常に 10 匹前後の “世話係” がいて(“ロイヤルコート” というそう)、口移しで特別食の “ローヤルゼリー” を食べさせたりするなど献身的に尽くしているかのような光景が見うけられるそうです。
女王以外のメスバチはなぜ産卵しない?
通常のメスバチ(働きバチ)たちは産卵しないのか、ってのが気になるとこですが、それについては以下の通り。
女王バチの分泌する特殊なフェロモンが周囲のメスバチたちを寄せ付け、それを体内に取り込んだメスバチたちは産卵機能が抑制されてしまい卵を産むことができなくなります。
そのフェロモンはメスバチたちからメスバチたちへと伝播して巣の中の全メスバチにその効果が及ぶこととなり、結果、女王バチ以外のメスバチによる産卵は一切できなくなるってわけです。
とはいえメスバチたちも産卵器官そのものは持ち合わせているため、女王バチ不在の異常事態が起こったりした場合などにはフェロモンの呪縛が解けて産卵機能が復活します。
ただその場合でも、オスバチを誘惑するためのフェロモンは女王バチにしか出せないため交尾に至ることはなく、つまりは “無精卵” によるオスバチしか生み出せないわけで、あまり大きな意味を持ちません。
最後に
“ローヤルゼリー” とは、孵化後 3 日目までの全幼虫と女王バチにだけ与えられる特別食で、メスバチの体内においてハチミツや花粉などの成分を駆使して作り出された超栄養価の高い健康食品です。
女王バチにとっては唯一無二の食事で、一生涯これ以外のものを口にすることはありません。
生まれた瞬間は他のメスバチとまったく同じ幼虫ながら、4 日目以降もローヤルゼリーを与え続けられる、というたったそれだけのことで、他のメスバチよりはるかに大きな体格と数十倍の寿命を持つ “女王バチ” になることができるのです。(働きバチの寿命は 1 ~ 3 か月、女王バチの寿命は 3 ~ 5 年)
そう考えると、“ローヤルゼリー” ってのは正真正銘 “超健康食” のような気がします。
今では国内有名メーカーのお高いものから手頃なサプリまで多種多様に出回っているので、美容や健康を真剣に考えている方は試してみる価値大かもしれませんね。
…てことで、まだまだ奥深きミツバチの世界。
その真の主役ともいえる “メスバチ(働きバチ)” の生態やその他アレコレなど、また後ほどご紹介できればと思います。
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