【はじめに】
米 NASA の超有名な宇宙探査機「ボイジャー」。
直訳すると “航海者”。
宇宙に詳しくない方でも名前だけは聞いたことがあるかと思います。
すでに打ち上げから 40 年以上が経過しますがいまだ現役活動中で、過去現在を通して宇宙空間に放たれた多くの人工物の中では最も人気者ではないでしょうか。
「ボイジャー」によって “宇宙” に興味を持つようになった方も大勢いらっしゃるはず。
その大勢の中の大半の方は、あの有名な 1 枚の写真におそらくは心動かされたにちがいありません。
「ペイル・ブルー・ドット」です。
主要なミッションをすべて終え、宇宙の彼方に旅立つその直前にクルリと振り返って撮られた「ボイジャー 1 号」による地球の写真です。
これは、生涯宇宙と平和を愛してやまなかった天文学者、故 カール・セーガン博士が提案し実現したもので、60 枚からなる太陽系家族写真(上写真参照)の一部。
その撮影を終えた 34 分後、「ボイジャー 1 号」の “目” は電力確保のため NASA によって永久に閉ざされることとなりました。
ここで、
「1 号 ?? 他にもおるんか ??」
と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか ?
はい、双子の弟分「ボイジャー 2 号」様もちゃんといらっしゃいます。
「ボイジャー」という宇宙探査機は知っていても「1 号」と「2 号」があること、または「1 号」と「2 号」の存在は知っていてもそれぞれのミッション内容についてなどはよく知らない方も多いでしょう。
写真の件も含め、真っ先に太陽圏を脱け出るなど何かと話題になりがちなのは「1 号」の方ですが、「2 号」も数多くの重要な発見等をなし、2021 年現在に至るまで海王星を探査した唯一の探査機でもあってこちらの功績も決して小さいものではありません。
そんなこんなで、今回は「ペイル・ブルー・ドット」(淡く青い点)と併せ、 NASA の「ボイジャー計画」及び「ボイジャー 1 号・2 号」についてのアレコレをサクッとご紹介しましょう。
「ペイル・ブルー・ドット」とは
上の写真、パッと見て見覚えのある方はそれなりのご年齢か、そうでなければかなりの “宇宙好き” かと推察いたします。
ご存知ない方は、ジッと目を凝らしてひとつの小さな “点” を探してみて下さい。
モニターをゴシゴシ拭いても消えなければ、それはホコリや汚れではなく、我々の唯一無二の故郷 “地球” です。(中心のやや右下の白っぽい点)
今から約 30 年前、1990 年のバレンタインデーの日に主要な任務を終えた「ボイジャー 1 号」は、NASA からの指令を受け、約 60 億 ㎞ 離れた宇宙の彼方から針の穴のような地球の姿を見事に写し出しました。
「ペイル・ブルー・ドット」(淡く青い点)と名付けられたこの写真は、故 カールセーガン氏の熱きメッセージと併せ、地球の写真としては 1、2 を争う最も有名なものではないでしょうか。
ちなみに、もう一方はおそらく「地球の出」といわれる「アポロ 8 号」のクルーによって 1968 年に撮られた月周回軌道上からの写真(下写真参照)でしょう。
青く美しい地球とほとんど見えない地球…
両者は対照的ですが、どちらも心に響く大きな何かを我々に与えてくれます。
「ボイジャー計画」とは
「ボイジャー計画」とは、2 機の探査機を用い、主に木星と土星、及びそれらの衛星の探査を目的に進められた米 NASA の宇宙ミッションで、両機とも 1977 年にケープカナベラル空軍基地より打ち上げられました。
「1 号」については、
『行けそうなら冥王星も行っちゃえ~』
「2 号」については、
『行けそうなら天王星と海王星も行っちゃえ~』
との大いなる希望も乗せて。
ちょうどこれらの惑星(当時「冥王星」は “惑星” に分類されていました)が公転軌道上にまとまり、新技術「スイングバイ航法」を用いることによって連続探査可能となる最高のタイミングだったからです。
この機会を逃すと次は 175 年後まで待たなければならず、当時の関係者の切望は察するに余りありましょう。
結論から言うと、「ボイジャー 1 号」については諸般の事情から冥王星には向かわず、まったく予定になかった土星の衛星「タイタン」への探査に変更、「ボイジャー 2 号」については議会の承認 & 予算が下りたことによって、天王星・海王星の探査に向かうことが可能となりました。
両機ともそれらのメインミッション終了後は星間空間ミッションへと切り替えられ、今や目的地なき孤独な “航海者” 。
いつの日か遭遇するかもしれない “地球外知的生命体” へ向けた「ゴールデン・レコード」を搭載して…
それぞれ太陽圏を抜けた遥か彼方から、2021 年現在に至るまで貴重なデータを送り続けてくれています。
「1 号」のトラブル処理で忙殺される中、「2 号」の打ち上げ直後の重要な操作が忘れられていたらしく、危うく膨大な “国家予算の塊” がパアになるとこだったそうな。
予備システムを用いてなんとかメインシステムにアクセスできたため事無きを得たらしく、NASA スタッフの面々は間一髪クビが繋がったようです。
「ゴールデン・レコード」とは
ボイジャーには「地球の音」(The sounds of Earth)というタイトルの金メッキされた銅板製レコードがついており、そこには地球上の様々な音や音楽(日本の音楽からは尺八による「鶴の巣篭もり」(奏者: 山口五郎)を収録)、55 種類の言語による挨拶(日本語の「こんにちは。お元気ですか ?」など)や様々な科学情報などを紹介する写真、イラストなどが収録されている。
中にはザトウクジラの歌も収録されている。
これは、ボイジャーが太陽系を離れて他の恒星系へと向かうので、その恒星系の惑星に住むと思われる地球外知的生命体によって発見され、解読されることを期待して、彼らへのメッセージとして積み込まれたものである。
レコードに収録されている 55 種類の言語による挨拶や自然音、効果音、画像の一部が公開されている。
Wikipedia
【参考動画】
「ボイジャー 1 号・2 号」の進行図
上画像は 2007 年時点の「ボイジャー 1 号・2 号」及びそれ以前に打ち上げられた「パイオニア 10 号・11 号」の位置関係 & 進行図です。
4 年も 5 年も前に打ち上げられた「パイオニア」より「ボイジャー 1 号」の方が遠くにいるってんだからスゴい速さですね。
「ボイジャー 1 号・2 号」の主な共通事項
❶ 1977 年にケープカナベラル空軍基地より打ち上げ
❷ 木星と土星、及びその衛星を探査
➌ 惑星間の移動に「スイングバイ航法」を採用
❹ 2021 年現在、通信可能な状態で太陽圏外にて運用中
➎ 「ゴールデン・レコード」を搭載
「ボイジャー 1 号」の主な個別事項
❶ 2021 年現在、地球から最も遠い人工物
❷ 2012 年に太陽圏を離脱(2 号は 2018 年)
➌ 2016 年時点の太陽からの距離は約 200 億 ㎞ (2 号は約 170 億 ㎞)
❹ 2016 年時点のスピードは毎秒約 17㎞ で、東京都庁から 1 秒で23 区外に出れる速さ(2 号は毎秒約 15㎞)
➎ 地球との通信は 2025 年頃まで可能か
❻ 打ち上げが遅れたが高速軌道を使ったため 2 号より早く木星 & 土星に到達
❼ 木星への最接近は打ち上げから約 1 年半後の 1979 年3 月(2 号最接近の約 4 カ月前)
❽ 木星の衛星「イオ」(下写真参照)の火山活動を明らかに
❾ 土星への最接近は打ち上げから約 3 年 2 カ月後の 1980 年 11 月(2 号最接近の約 9 カ月前)
❿ 土星(下写真参照)の輪の複雑な構造を明らかに
⓫ 冥王星には向かわず当初の予定にはなかった土星の衛星「タイタン」を探査
⓬ 60億 ㎞ の彼方から太陽系家族写真を撮影
NASA は 2027 年、「ボイジャー」や「カッシーニ & ホイヘンス・プローブ」から得たデータをもとに “生命体” をも視野に入れた更なるミッション「ドラゴン・フライ」を史上初のドローンにて行う予定。
詳しくは以下記事にて。
「ボイジャー 2 号」の主な個別事項
❶ 2018年に太陽圏を離脱(1 号は 2012 年)
❷ 2016 年時点の太陽からの距離は約 170 億 ㎞ (1 号は約 200 億 ㎞)
➌ 2016 年時点のスピードは毎秒約 15㎞(1 号は毎秒約 17㎞)
❹ 地球との通信は 2030 年頃まで可能か
➎ 木星への最接近は打ち上げから約 1 年 11 カ月後の 1979 年 7 月(1 号最接近の約 4 カ月後)
❻ 木星大赤斑(大目玉)の反時計回りが判明
❼ 木星の新衛星「アドラステア」を発見
❽ 土星への最接近は打ち上げから約 4 年後の 1981 年 8 月(1 号最接近の約 9 カ月後)
❾ 天王星(下写真参照)への最接近は打ち上げから約 8 年 5 カ月後の 1986 年 1 月
❿ 天王星の新衛星 10 個を発見
⓫ 天王星に磁場があることを発見
⓬ 天王星の環が天王星本体より先に形成されたことを発見
⓭ 海王星(下写真参照)への最接近は打ち上げから約 12 年後の 1989 年 8 月
⓮ 海王星の新衛星 6 個を発見
⓯ “氷の塊” たる海王星が太陽から受けた熱より多くの熱を放射していることを発見
最後に
古今東西、世界情勢は常にピリピリしていますが、 “地球人” どうしでゴチャゴチャもめていたらそのうち文明の遥かに進んだ “地球外生命体” に滅ぼされるのでは。
というより、地球そのものに愛想つかされるカモ…
最後に、故 カール・セーガン氏の全人類に宛てたメッセージ、「ペイル・ブルー・ドット」を貼り付けておきます。
〖私たちは星の材料でできている〗
とは彼の残した名言なり。
カール・エドワード・セーガン(Carl Edward Sagan, 1934 年 11 月 9 日 – 1996 年 12 月 20 日)は、アメリカの天文学者、作家、SF 作家。
元コーネル大学教授、同大学惑星研究所所長。
NASA における惑星探査の指導者。
惑星協会の設立に尽力。
核戦争というものは地球規模の氷河期を引き起こすと指摘する「核の冬」や、地球工学を用いて人間が居住可能になるよう他惑星の環境を変化させる「テラフォーミング」、ビッグバンから始まった宇宙の歴史を “1 年という尺度” に置き換えた「宇宙カレンダー」などの持論で知られる。セーガンは太陽系を解明するために打ち上げられた無人惑星探査機計画の大半に参与した。
セーガンは、地球外の知的生命によって発見されれば解読されることを前提に、変形しない普遍的なメッセージを太陽系外に飛んで行く探査機に搭載することを考案した。
その最初の試みがパイオニア探査機の金属板であった。
セーガンはそのデザインをフランク・ドレイクらとの共同で改訂し続け、その集大成が、彼が鋳造に加わったボイジャーのゴールデンレコードで、ボイジャー 1 号とボイジャー 2 号に積まれた。
火星探査機マーズ・パスファインダーの着陸地点は彼にちなんで「カール・セーガン基地」と名付けられた。1993 年にはアメリカ天文学会が「公共の科学理解のためのカール・セーガン賞」を設立した。
最初の受賞者はセーガン自身である。
以降、公共の科学理解に寄与した科学者、団体、テレビ番組などが受賞している。
セーガンの死後の 1997 年にはアメリカ天文学会がカール・セーガン記念賞を創設した。
これは宇宙の研究と理解のために寄与した人物、団体に贈られる。
Wikipedia より一部抜粋
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