【はじめに】
『ミシュラン3ツ星 !』
『ミシュラン星付き !』
『ミシュランに掲載 !』
などなど、ほとんどの方は雑誌やテレビなどで【ミシュラン】なる言葉を見たり聞いたりしたことがあるかと思います。
美食家の方や食べ歩きがお好きな方なら当然にご存知でしょう。
【ミシュラン】(ミシュランガイド)とはフランスを拠点に発行されている、世界各地の秀逸なレストラン等を掲載したガイドブックのことで、数多いグルメ系ガイドブックの中でも頂点に君臨するといえるものです。
今では “各国版” や “各地域版” に加え “各都市版” のものも多数発行されており、創刊 100 年以上の歴史と権威、そこに掲載されることのステイタスと影響は他の追随を許しません。
しかしながらこの【ミシュラン】、車好きの方ならよくご存知でしょうが、フランスの “タイヤメーカー” の名でもあります。
旅好きのワタクシは、各地で【ミシュランガイド】を参考にレストランを探したりもしますが、なんと最近まで【ミシュランガイド】の発行元と “タイヤメーカー” の【ミシュラン】とはまったく関係のない別会社だとばかり思っておりました。
“洗練された料理” と “ゴムで作られる工業製品” ってのがどう考えても結びつかず、先入観として勝手にそう思い込んでいたのです。
ところが知ってびっくり。
これらは同じ会社ってだけでなく、
『タイヤを売るためにガイドブックを作る』
てのが、100 年以上一貫して持ち続けている企業コンセプトなんだとか。
フランス版『風が吹けば桶屋が儲かる』とでも言いましょうか。
要するに…
〖秀逸なガイドブックを作る ⇨ ガイドブックを大勢が買う ⇨ 掲載店めがけて大勢が車を走らせる ⇨ 多くのタイヤがガンガンすり減る ⇨ タイヤの交換サイクルが UP ⇨【ミシュラン】の業績も UP〗
てなわけです。
今現在どこまでこの方程式が生きているのかは不明ですが、会社設立時からの理念に今後ともブレは生じないでしょう。
そんなこんなで、今回はこのタイヤメーカー【ミシュラン】が発行する超有名レストランガイド、【ミシュランガイド】についての 歴史・調査審査の方法・星の意味 などを詳しくご紹介。
なお、本記事では “掲載店” のご紹介は一切いたしておりませんので悪しからず。
一般的に【ミシュラン】や【ミシュランガイド】と言った場合、レストラン & ホテルのガイドブックたる “レッド・ミシュラン” を指しますが、旅行ガイドの “グリーン・ミシュラン” や道路地図などその他のガイドブックもあわせて発行されています。
【ミシュランガイド】の誕生
【ミシュランガイド】を語る上で避けて通れないのはタイヤメーカー【ミシュラン】のご説明。
創業は 1889 年で、農機具と小さなゴムの製造会社をミシュラン兄弟が引き継いだのがすべての始まりです。
その 2 年後、短時間で着脱可能な自転車用「空気入りタイヤ」を開発し、有名なレースで圧勝したことから会社名が世に知れ渡ることとなりました。
さらに自動車用「空気入りタイヤ」も開発した兄弟ですが、当時はまだ車を実生活で活用するといった風潮はなく、そのままではせっかく開発した自動車用タイヤの売上げは期待できません。
そこで思いついたのが、便利なガイドブックを配布してガンガン車を運転させようといった戦略です。
そしてパリ万博が開催された 1900 年、二人は詳しい市街地図とあわせ、ガソリンスタンドやホテルの一覧、自動車の整備方法などを記したガイドブックを 3 万 5000 部印刷して自動車運転者に無料で配布しました。
記念すべき【ミシュランガイド】第 1 号の誕生です。
その後しばらくは無料配布を続けますが、1920 年以降は有料配布へと切り替えられました。
“星” によるランク付けと “調査員” の導入
掲載されるだけでも名誉な【ミシュランガイド】ですが、見る側であれ掲載される側であれ、やはり気になるのは “星” の有無や個数ではないでしょうか。
この “星” 制度が導入されたのは 1926 年のこと。
当初は “特においしいレストラン” を示すものとして星は 1 ツのみだったそうですが、1933 年までには全ての【ミシュランガイド】において今と同じ 3 ツ星方式が採用されたそうです。
また、同時期に「匿名調査員制」も導入され、フランス本社で訓練を受けた専門の調査員(ミシュラン社員)による覆面調査も開始されました。
【ミシュランガイド】の評価基準は ?
【ミシュランガイド】掲載にあたって評価されるのは以下の 5 点で、店のサービスや雰囲気は一切関係なく、純粋に皿の上の料理のみが対象。
① 素材の質
➁ 調理技術の高さと味付けの完成度
③ 独創性
④ コストパフォーマンス
➄ 常に安定した料理の一貫性
これらについて、調査員・編集長・ガイドブックの総責任者、などなどが議論したうえ合議で決めるそうです。
そして “星” の基準については以下のごとくされており、付与や増減にはその影響の大きさから相当念入りな調査や協議が行われるようです。
★ ⇨ その分野で特においしい料理
★★ ⇨ きわめて美味であり遠回りをしてでも訪れる価値がある料理
★★★ ⇨ それを味わうために旅行する価値がある卓越した料理
3 ツ星を得たレストランはマスコミにも大きく取り上げられ、来客数が増えるだけでなく様々な企業とのスポンサー契約なども見込まれて、その収益は格段に UP するといわれています。
反面、3 ツ星からの脱落やその事前通告は関係者に計り知れないショックを与え、フランスの有名シェフ《アラン・ジック》や《ベルナール・ロワゾー》の自殺などはこれが原因だとされています。
またフランスの高級レストラン「マキシム」が 1978 年版から突如掲載されなくなったのも “3 ツ星からの降格を事前通告されたため以降の掲載を断った” からであろうとされています。
日本における【ミシュランガイド】
ヨーロッパ中心の【ミシュランガイド】を他の国々にも大きく展開させたのが、2004 年、第 6 代総責任者に就任した《ジャン=リュック・ナレ》氏。(下動画参照)
2005 年にアメリカ主要都市版を発行したのち、2007 年末にはアジア初となる【ミシュランガイド東京 2008 年版】を発行させました。
調査対象は東京 8 区(品川・渋谷・新宿・中央・千代田・豊島・港・目黒)の約 1500 軒。
その中からあらかじめ選出された約 1000 軒を覆面調査員が順次訪問し、最終的に 150 軒が掲載されるに至りました。
その全てに 1 ツ星以上が与えられ、和食店や寿司店など内 8 軒が 3 ツ星を獲得しています。(フランスの 10 軒に次ぐ第 2 位)
『日本の飲食店の相当数は誰も追いつけない専門性を確保していた。当然高い評価につながる』
とは中央日報のインタビューに応えるナレ氏の弁。
【ミシュランガイド東京 2008 年版(日本語版)】は初版 12 万部のうち 9 万部が発売初日に売れたそうで、これはミシュラン史上初めての快挙なんだそうです。
“フランス人による和食評価” に疑問を投げかける声もあるようですが、ナレ氏曰く、
『調査員に日本人も加わっているので問題ナシ』
とのこと。
“星の大盤振る舞い” に様々な憶測や批判などが飛び交う中、その 2 年後の【ミシュランガイド東京 2010 年版】では 3 ツ星獲得 11 軒、星のトータル数 267 個とその両方において東京が世界一となりました。
【参考動画】
〖ミシュランガイド東京2010 「東京は世界の美食の首都」〗
調査員や調査方法について
調査員の大半は 5 年 ~ 10 年程度レストランやホテルで経験を積んだ【ミシュラン】の社員。
半年間の新人研修ののち、さらに半年間を先輩調査員に同伴して学び、その後の適性審査をクリアすることによってようやくデビュー可能となります。
国や地域差もあるでしょうが、1 年の多くをホテルで過ごしたりレストランを訪問しながら評価を行っているそうです。
調査は基本匿名ですが、一般客にはない調査員特有の行動パターン(皿を裏返して眺めたりメモを取ったり…etc)からバレるケースも多いとか。
状況やタイミングによっては自分から身分を明かした上での聞き取り調査もあるようです。
なお、
『ナレは調査員を素人ばかりにしてしまった』
という、16 年間ミシュランで調査員を務めた《パスカル・レミ》氏の批判は気になるところ。
以下は 2009 年にフランス版編集長に就任した《ユリアネ・カスパー》氏による、調査、および調査員についての説明です。
今現在はある程度変わっていましょうが、ご参考まで。
フランスの調査員は約 15 人、ガイドに掲載されているホテルやレストラン 8,072 軒を担当する。
世界中に調査員は約 90 人、日本にも 7 人の日本人調査員がいる。
1 日あたり 2 – 3 軒、ガイド読者推薦のレストランを抜き打ちで訪問して調理場などを調べ、掲載候補はのちに覆面調査される。
調査員は月曜昼から金曜昼まで昼夜連続 9 食をこなす。
覆面なしの調査も少なくなく、覆面調査でも支払いを済ませてから調査終了時に身分を名乗り、店の評価についてオーナーと議論を交わす。
この時点で素性が明らかになるので、数年間は同じ地方を担当しない。
調査のあと、1 軒あたり約 1 時間かけて報告書を作る。
星の獲得や喪失には必ず複数が覆面調査に入ったうえで協議し増減を決定する。Wikipedia より
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