【はじめに】
「ロボトミー手術 ?? 何それ ??」
なんて方も多いのではないでしょうか。
比較的年齢層の高い方や医療関係者の方はご存じかもしれませんが、今は世界的にもほぼなされていないはずで、若い世代にはあまり知られていないかと思われます。
近年まであらゆる国において公然と行われ、多数の精神病患者を廃人同然のように変えてしまった悪名高き “悪魔の手術” をご紹介いたしましょう。
ロボトミー手術(精神外科手術)とは
つい “ロボット” を連想してしまいそうなネーミングですが、ロボットとは何ら関係なく、臓器の構成単位である “葉(よう)→ lobe” と “解剖 → anatomy” を組み合わせた名称だそうです。
術式は何通りかあるようですが、総じて言えるのは、
「健康な脳(前頭葉の一部)を意図的に損壊させ精神の安定を図る」
といった手術です。
“精神にメスを入れる” という意味から “精神外科” などともいわれる分野ですが、 “神経外科” と似てて何だか紛らわしいですね。
決定的な違いは、“精神” 外科医 は、高度な医療技術をもたない “カウンセラー” みたいなものであるのに対し、“神経” 外科医 は人体構造や医術に精通した “手術を任せるに足る医師” だってことでしょう。
精神病患者へのこれといった治療法もなく、当時の社会情勢ともあいまって世界各地で一気に普及したロボトミー手術ですが、後遺症などの問題が大きく取りざたされ、また 1950 年代には効果の高い精神治療薬が開発されたこともあって、一気に廃れてしまいました。
“精神外科” などといった言葉も今ではほぼ死語だそうです。
ロボトミー手術(精神外科手術) の起源と普及
1936 年に、ポルトガルの医師 “アントニオ・エガス・モニス”(上写真)によってロボトミー手術の元祖たる “ロイコトミー手術” が考案されました。
脳の一部を切断するための細長い器具(ロイコトーム)にちなんでつけられた名称です。
1935 年にロンドンで開かれた「第二回国際神経学会」で、イエール大学の神経学者らが発表した “チンパンジーの脳実験” にヒントを得てひらめいたとか。
モニスを “師” のごとく仰いでいたアメリカの精神科医 “ウォルター・ジャクソン・フリーマン”(写真中央)は、すぐさまその術式を学び、神経外科医 “ジェームズ・ワッツ”(写真右)の協力のもと改良を加え、“ロボトミー手術” としてその普及に努めました。
(写真:Wikipedia より)
1940 年代には第二次世界大戦終結の帰国兵なども加わって精神病患者で溢れていたアメリカでは、ロボトミー手術はいわば大ブームのようになり、1949 年にはフリーマンの推薦もあって、元々の考案者 “アントニオ・エガス・モニス” にはノーベル賞が与えられています。
なお、そこに至るまでの1945 年に、フリーマンは自宅にあったアイスピックに発想を得て “経眼窩(けいがんか)ロボトミー” なる術式を考案しました。
アイスピックに似せた細長い器具(ロイコトーム)を眼球と上まぶたの隙間から脳に向けてズンズン刺し込んでいき、手探りで前頭葉の一部を切断する、といったゾッとするものです。(下画像)
時には本物のアイスピックを使うこともあったそうで、“アイスピック・ロボトミー” などともいわれています。
そもそもこんなのを “手術” とよんでいいんだか…
とはいえ、外から手術痕が見えず、また、手術室など大がかりな設備も不要でスピーディーに行えることから、以後この術式が主流 となりました。
当初より世界各地で行われていたロボトミー手術ですが、簡略化された術式に加え、ノーベル賞の “お墨付き” を得たことによってこの手術を施される患者数は激増することとなります。
そしてそれは同時に、後遺症によって廃人同然のようになってしまった人を多数生み出すことにもなりました。
脳の中でも “ヒトをヒトたらしめている重要な部分” を手探りでいじくり回すのですから当然っちゃあ当然です。
ロボトミー手術(精神外科手術) による “ローズ・マリー・ケネディ” の後遺症
当初よりロボトミー手術による後遺症はしばしば報告されていたようですが、世間一般にその深刻さと恐怖を知らしめたのが、故ケネディ大統領の実の妹 “ローズ・マリー・ケネディ”(上写真)の術後の様子が明らかになってからではないでしょうか。
少女時代、精神的に不安定だった彼女は、政治家だった父ジョセフのひそかな同意によって、23 才 の時にロボトミー手術を受けさせられました。
その後の彼女はというと、幼児性が顕著になり、話す内容が支離滅裂になり、何時間もボ~ッと壁を見つめたり、尿失禁するようになったり…
などなど、良好な手術結果とはほど遠い、廃人同然となってしまったのです。
施設に隔離され、ケネディ家から隠されていた彼女でしたが、兄の “ジョン・F・ケネディ” の大統領就任がきっかけとなってその存在が明らかとなりました。
施設において 86 歳まで生き永らえたそうですが、皮肉なことに、ケネディ兄弟の中で “自然死” を迎えられたのは彼女が初めてだったそうです。
写真 : イメージ
ケネディ大統領といえば第三次世界大戦勃発か !? ともいわれた「キューバ危機」。
詳しくは以下記事にて。
日本におけるロボトミー手術(精神外科手術)
日本で最初に行われたロボトミー手術は、1942 年に新潟医科大学でなされたものとされています。
戦中戦後を通して延べ約3万人が施術されたそうですが、数々の問題点が掲げられる中、1975 年、「日本精神神経学会」にてロボトミー手術の廃止が宣言され、日本におけるロボトミー手術は実質的に姿を消しました。
姿を消したとはいえ、これはあくまで「日本精神神経学会」による自主規制によるもので、いまだ “治療行為” として健康保険の対象にもなっているようですし、某ロボトミー絡みの裁判においても違法性は指摘されておらず “合法” だとされています。
“ロボトミー殺人事件” とは
ロボトミー手術の考案者、“アントニオ・エガス・モニス” が元患者から銃撃され下半身不随になったのは有名な話しですが、日本でも手術とは無関係な、施術者の妻と母親が元患者に殺害されるという痛ましい事件が起こっています。
“ロボトミー殺人事件” といわれ、スポーツライターだった男性が、ちょっとした言動から “危険人物” だとしてロボトミー手術を施され、その後遺症への恨みから犯行に及んだとされるものです。
最後に
当初は “魂の手術” だとして絶賛されたものの、後には “悪魔の手術” などといわれ、悪いイメージのみが定着してしまったロボトミー手術。
しかしながら、ある調査によれば施術を受けた患者の約 7 割は問題なく治癒したともされています。
脳の構造や医術に精通した “神経外科医” が適切に行えば、後遺症のリスクも少なく効果的な治療法だという見方もあり、いくつかの国では “最後の手段” として再びこの手術を認めているとも聞きます。
廃人同然の人間を多数生み出したその原因は、
「医学的知識の乏しい者が、施術する必要のない患者までをも多数施術した」
からだそうです。
本来は “他に治療法の見当たらない重篤な精神病患者” に対してのみ慎重を期してなされるべきものが、 “暴れたり騒いだりして困るから” といったような、管理者サイドの安易な動機による施術がいつしか認められる世の中となっていました。
そうしたことを一切なくし、厳格な条件のもとで適切に施術さえすれば、救われるべき方がきっちり救われるといった “治療” として存在意義あるものになりうるのかもしれません。
過去にこの手術を施され、まだご存命の方も世界各地には多数いらっしゃいましょう。
不本意にも廃人同然のようになってしまったとはいえ、それらの人々は人権を有する “被害者” だという点もまた忘れてはなりません。
オススメ映画
「ロボトミー手術」を題材とした映画でオススメなのは、レオナルド・ディカプリオ主演の「シャッターアイランド」やジャック・ニコルソン主演の「カッコーの巣の上で」、です。
「シャッターアイランド」ならびに「カッコーの巣の上で」は VOD(動画配信サービス)の【U-NEXT】にて現状(2021 年 8 月 2023 年 10 月現在)タダでご覧いただけます。
【参考動画】
「カッコーの巣の上で」映画予告(英語版)
「シャッターアイランド」のご購入に(DVD・Blu-ray)
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