【はじめに】
コーヒー…
今や世界中のほとんどの国では日常に欠かせない飲み物のひとつでしょう。
都会にはお洒落なカフェがいたる所にあり、家庭や職場なども含め、一日に何杯も飲まれる方も多いのではないでしょうか。
かく言う自分もその一人で、もはや中毒レベル。
しかしながら、これまで散々コーヒーのお世話になってきたわりにはちっとも分かっていなかったコーヒー事情。
先日たまたま視聴したドキュメンタリー映画【おいしいコーヒーの真実】で、末端の生産農家がいかに貧困に喘ぎ、苦しみ、もがいているかを知り大きく反省。
コーヒー一杯飲まれても、その大半はカフェや中間業者の収入となり、農家の手に渡るのはたかだか 1% 程度なんだそうです。
大家族で、電気製品などまったくない掘っ立て小屋に住む彼らに、“ニューヨーク取引所のコーヒー豆相場” など知る術はなく、交渉手段を持たない彼らには買取り業者の提示する安い値で売る以外にないのが現状なんだとか。
映画は「モカ」で有名なエチオピアの、「オロミア州コーヒー連合会」の一人の代表にスポットをあて、コーヒーを取り巻く環境とともにコーヒー農家を貧困から救うべく奔走する彼の姿を収めたもので、2006 年に公開されたもの。
かなり前の作品なのでその後の状況が気になるとこですが、映画内での “努力” やフェアトレード(後述)の恩恵などもあってか、少しずつ良い方向へと向かってはいるようです。(【最後に】に資料あり)
と、まあそんなこんなで、“知っているようでよく知らなかったコーヒー事情” のアレコレを少しばかり学習し、以下にズラズラっと書き記してみた次第。
“コーヒーうんちく” の仕入れがてら、スタバのおまけタイムにでもお読み頂けたら幸いです。
あ、スタバといえば 2015 年以降スタバコーヒーは 99% が「エシカルなコーヒー」なんだそうな。
さすがですね。
エシカル ???
何それ?てな方は以下サイトへ GO!⇩
「コーヒー」の基本知識 アレコレ
【コーヒーの歴史】発祥および日本への伝来
コーヒーの起源(人間による利用)は諸説あってはっきりしませんが、原産地アフリカのエチオピアが発祥とする説が有力なようで、今風のコーヒー(焙煎豆から抽出したコーヒー)が登場したのは 13 世紀以降とされています。
1400 年代半ばに “嗜好品” として一般民衆に広がったコーヒーは 1600 年代にヨーロッパやアメリカ大陸へと伝わり、日本へは 1700 年代後半にオランダ人によって初めて持ち込まれました。
江戸時代初期には早くもオスマン帝国の首都イスタンブール(旧コンスタンティノープル)で世界初の近代的なカフェがオープンしたとか…
日本とはえらい差ですね。
日本におけるコーヒーは当初 “嗜好品” というよりも “医薬品” 的な立場だったようで「水腫」に効果があるとされていました。
“嗜好品” としての記録は 1867 年に「パリ」で飲んだ渋沢栄一の記したものが “初” とされています。
日本で “嗜好品” としてのコーヒーが広まり、東京にわが国初の喫茶店「可否茶館」がオープンしたのは 1888 年。
その後、明治時代から大正時代にかけて「カフェー」と呼ばれる喫茶店が全国的に普及しました。
「コーヒー」そのものはどんなもの?
「コーヒー」なるものを調べてみたら、その生産から我々が口にするまでのプロセスはなかなかに多様で、想像以上に奥深い飲み物だということが判明。
とはいえ、コーヒー通の方であれば知ってて当然レベルのことばかりかと思いますので悪しからずご了承下さい。
コーヒーの「栽培種」と「栽培品種」
「アラビカ種」の開花 Wikipedia より
コーヒー豆には大元となる「栽培種」なるものがあって、よく知られているものは「アラビカ種」「ロブスタ種」「リベリカ種」の三種。
さらに各「栽培種」からはそれぞれ品種改良等によって「栽培品種」なるものが多数枝分かれしており、もはやどれだけあるのかよくわかりません。
例えばよく耳にする「ブルーマウンテン」ですが、これは「アラビカ種」に属する「栽培品種」のひとつで、元祖はジャマイカに移入され栽培されたものだそうですが、後にケニアにも移入されたんだそうな。
が、「栽培品種」としてのブルーマウンテンと、一般的にいう「銘柄」としてのブルーマウンテンとはまた意味合いが違うらしく、ケニアのブルーマウンテン品種のものを銘柄としてブルーマウンテンとは呼べないんだとか。
(銘柄としてブルーマウンテンと呼べるのは、ジャマイカのごく一部の地域のみで生産されたブルーマウンテン品種のコーヒーのみ)
ややこしすぎやろ…
とりあえず「栽培種」三種の中でも世界各地で一般に流通しているのは質の高い「アラビカ種」(7 ~ 8 割)と質の低い「ロブスタ種」(2 ~ 3 割)の二種類で、「リベリカ種」はごく僅かしか生産されず流通もほぼ生産地周辺にとどまるそうです。
コーヒー豆の採取からコーヒーが飲めるまで
一般的なレギュラーコーヒー(インスタントコーヒーや缶コーヒーでないもの)が消費者の口に届くまでの流れ(精製 ⇨ 焙煎 ⇨ 粉砕 ⇨ 抽出)を以下簡単に説明しますと…
❶
栽植された「コーヒーノキ(コーヒーの木)」は 3 ~ 5 年ほどでようやく白い花が咲き、その約 9 カ月後に「コーヒーチェリー」なる実が赤く熟す。
年に一度きりの収穫で、50 年以上実はつけるそうですが収穫量が落ちるため 20 年をめどに植え替えされるんだそうです。
ちなみに花はジャスミンに似た香りで、その命はたったの一日だとか。
明治以降日本でも小笠原諸島や沖縄で生産が試みられ、大規模生産こそ成功しなかったものの現在でも小規模ながら生産販売が行われているそうです。
画像:Wikipedia より
❷
【精製】
コーヒーチェリーを採取し、中から種子(コーヒー豆の生豆)を取り出して選別する。
ひとつのコーヒーチェリーからは基本 2 粒の種子が取り出され、ここまでの工程は単純作業でもあって通常各農家など生産地でなされる。
ちなみに、エチオピアにてこの選別作業に携わっている女性の日給(トータル 8 時間)は 2005 年時点で 0.5 ドル(日本円で数十円)以下なんだとか…
➌
【焙煎(ロースト)】
輸入国にて仕入れ業者や各ショップなどがコーヒー豆の生豆を熱処理する。
生豆のまま買い入れ各家庭で直接行うパターンも。
“直火” や “遠赤外線” など焙煎方法はいくつかあり、さらに焙煎の度合い(時間等)によって「浅煎り」だの「深煎り」だのと呼ばれ風味も変わってくる。
「浅煎り」は香りや酸味に優れ、「深煎り」は苦みに優れるんだそうな。
❹
【粉砕(グラインド)】
焙煎されたコーヒー豆(焙煎豆)をミルなどを用いて細かく砕く。
これも粒の大きさによって「細挽き」「中挽き」「粗挽き」だのに区別されその味も違ってくる。
イタリアなどでよく飲まれる「エスプレッソ」ではほとんど微粉状態ともいえる「極細挽き」が用いられるんだそうな。
➎
【抽出(ドリップ)】
粉砕されたコーヒー豆をフィルター等で「濾す(ドリップ)」ことによってようやく「飲む」ことが可能となる。
これも「水ドリップ」「ペーパードリップ」「ネル(布)ドリップ」などの方式がありそれぞれ味わいが変わるとされる。
「ペーパードリップ」(「ネルドリップ」も ??)では湯の温度を上げると苦みが UP、下げると甘みが UP するとのこと。
これらの複数を巧みにブレンドさせたりすることによって独自の香りや味わいが生み出されるそうですが、これ以上は書く気になれないので詳しくお知りになりたい方は別途ググるなどしてお調べ下さいませ。
以上、大まかに記しただけでしたが、「コーヒー」なるものの基本(ややこしさ ??)がザックリとはお分かり頂けたのではないでしょうか。
コーヒー農家の 労働問題・貧困問題
今や生活に欠かせないコーヒーですが、今後飲めなくなるかもしれない “ヤバイ状況” とは常に紙一重であるといえます。
“2050 年問題” ともいわれる地球温暖化による生産地減少も危惧されていますが、何よりも喫緊の懸念は、農家があまりの貧困から
『もうコーヒー栽培なんてやってられん!』
と一斉に投げ出すことです。
映画【おいしいコーヒーの真実】が製作された 2000 年代前半頃は特に悲惨だったようで、実際大多数の農家が何年もかけて育てた「コーヒーノキ」を伐採してコーヒー豆の何倍もの収入が得られる「チャット(麻薬の葉)」の栽培に切り替えたとのことでした。
「コーヒーノキ」と同じ条件下で栽培可能なものは「チャット」しかないため生きていくため否応なくとのことです。
現在は一定の最低価格が保証された「フェアトレード商品」の販路拡大や各生産地の努力などもあって年々改善されてはきているようですが(下【グラフ 3】~【グラフ 5】参照)、まだまだ “労働に見合った正当な収入” を得ているとまではいえないのが現状ではないでしょうか。
そんなこんなから、現在のコーヒーを語るうえでどうしても避けて通れないのが「フェアトレード」といった認証制度についてです。
【参考資料】
「フェアトレード」を簡単にわかりやすく★《動画付き》
気温等の環境からコーヒー豆の生産に適しているとされているのは、赤道を中心に北緯 25℃(北回帰線)と南緯 25℃(南回帰線)の間のわずかなエリアで「コーヒーベルト」ともいわれています。(上図参照)
暑く、人間にとっての環境は最悪なため文明はあまり発達せず、必然的に発展途上国がひしめくエリアとなりました。
リッチな先進国であれば、仮に自国の農家が貧困に喘いでいても国政で救済策などが打ち出せますが、発展途上国にはそのような経済的余裕などなく、国も生産者ももっぱら他国からの援助に頼る他ありません。
そうした中、貧しい生産農家の救済や環境破壊防止などを目的として 1960 年代より欧米を中心に始まった公正公平な取引形態が「フェアトレード」といわれるものです。
生産や流通において一定の要件をみたしていれば第三者機関により “認証” を与えるといった制度で、日本でも1990年代以降に導入されました。
読んで字のごとし、「フェア(対等)」な「トレード(取引)」によって商品化されたものであることを買い手が一目見て分かるよう商品パッケージに認証マーク(画像参照)を表示するといったもので、当該商品については生産農家に “労働に見合った正当な対価が支払われている” ということになります。
画像:フェアトレードジャパン HP より
【参考動画】
「フェアトレード認証」の対象製品と認証基準
「フェアトレード認証」の対象とされる製品はコーヒー以外にも多数定められており以下表のごとし。
また、認証を受けるためには生産者や中間業者のすべてが以下表のような一定基準をクリアしていなければなりません。
「フェアトレード」の現状・問題点と今後の課題
「フェアトレード」の認証商品が世界中に広く普及すれば生産農家の貧困は大きく解消されるはずですが、まだまだ普及しているとまではいえないのが現状ではないでしょうか。
取引実態を示したある比較グラフを見ると、イギリスに比べ日本などはまだダメダメです。
個人的にも行きつけのスーパーでそれとなく確認してみましたが、以前はポツポツ見受けられたフェアトレードの認証コーヒーがどこを探しても見当たりませんでした。
チョコレートはありましたが…
これはある意味当然と言えば当然のような気もします。
生産者への支払いが UP する分その差額は商品価格に上乗せされるのが通常でしょうから、同種商品との競合上「買われない商品」となってしまい、結果「仕入れから外される商品」となってしまうのだと思われます。
日本の場合は特に…
そうであればもはや本末転倒というほかありません。
一番ベストなのは、消費者に「フェアトレード認証」が何たるかを広く知ってもらったうえで
『高いけど買ってあげよう!』
といったボランティア精神的なものを持ってもらうことかもしれませんが、これはまずムリでしょう。
日本の場合は特に…
となれば流通経路やシステムを大きく見直して、消費者が手に取る価格にまで下げる以外に方法はありません。
映画によれば、生産農家から消費者が口にするまで実に 6 回もの取引過程があり、そのつど商品金額が跳ね上がっていくのだとか。
宣伝活動もさることながら、途中の “不必要な取引” をどれだけ省き、どこまでコストカットできるかが今後の成否を握っているといえるのではないでしょうか。
最後に
映画【おいしいコーヒーの真実】で取り上げられていたオロニア州コーヒー連合会の “その後” について、フェアトレード・ジャパンの公式 HP に年度不明ながら以下のような記事が掲載されておりました。
なにはともあれ、とりあえず良き方向には進んでいるっぽいです。
黒人のおっちゃん(連合会代表)の頑張りが実を結びつつあるんでしょうね。
麻薬の栽培などせず、末永く美味しいコーヒーを提供し続けてもらうためにも「フェアトレード商品」が広く普及するよう願ってやみません。
映画【おいしいコーヒーの真実】のご視聴に
ドキュメンタリー映画【おいしいコーヒーの真実】は動画配信サービス(VOD)の【U-NEXT】にて現状(2021 年 9 月現在)タダでご覧になれます。
詳細は以下記事にて
画像:U-NEXT より
【映画予告】
〖映画【おいしいコーヒーの真実】予告編〗
【おまけ動画】現存している世界最古のカフェ「フローリアン」(イタリア / ヴェネツィア)
〖Caffè Florian Venice, Italy (4K walking tour)〗
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