【はじめに】
太った丸顔のこの男…
コメディアンでもなければお笑い番組の司会者でもありません。
禁酒法時代にアメリカのシカゴを地盤として勢力を伸ばしたマフィアのボスで、その名を「アル・カポネ」といいます。
超有名人なのでご存知の方も多いでしょう。
ちなみに写真は三十代半ば。
ありえん…
若い世代にまで広くこの名を知らしめたのは、やはり大ヒット映画の【アンタッチャブル】ではないでしょうか。
カポネ演じるロバート・デニーロが、顔を太らせ、髪の毛を抜いてまでして役にのぞんだのが話題ともなりました。
ケビン・コスナーやアンディ・ガルシアといった大物スターを世に生み出した映画としてもよく知られています。
ということで、今回はこの個人的お気に入り映画【アンタッチャブル】を熱くご紹介いたしましょう !
…といきたいとこですが、映画好きの方ならほぼご存知のはず。
てなわけで、映画【アンタッチャブル】に軸足を置きつつ、少し違った角度から「アンタッチャブル」をご紹介したいと思います。
映画の中の「アンタッチャブル」しかご存知なければ、事実との相違にちょっとビックリではないでしょうか。
「禁酒法」とは
“酒” を “禁ずる” など死刑に匹敵するといった方はワンサカいらっしゃるのではないでしょうか ?
時は 1920 年~1933 年。
10 年以上もの長きにわたり、“嗜好品” としてのあらゆる酒がアメリカ全土において製造・輸送・販売のすべてが法によって禁じられました。
合衆国憲法修正第 18 条、「国家禁酒法(ボルステッド法)」といわれるものです。
1917 年に上院で可決して以降、一定の手続きを経て 1920 年に施行されました。
酒好きだったのか、時のウィルソン大統領が拒否権を発動して反抗しましたが、上院で再可決され決定してしまった悪名高き法律です。
とはいえ、誰も酒を口にすることができなくなったかといえばそうではありません。
法の締め付けが強まるほどに “よからぬ連中” が暗躍するのが世の常です。
アメリカの場合それはマフィアでした。
「アル・カポネ」vs「エリオット・ネス」
中でも禁酒法を背景にして一躍 “スターダム” にのし上がったマフィアのボスが「アル・カポネ」です。
シカゴを拠点としていたカポネは、警官、議員、裁判官、などあらゆる官憲を買収しながら密造酒の製造販売を手広く行い莫大な利益を得ました。
カポネの年収は多い時で 1 億ドル以上もあったとか…
酒好き庶民にとってカポネはある意味ヒーロー的存在でもあったようで、またカポネ自身も寄付などさまざまな慈善事業を行いながら “庶民の味方” をアピールしていました。
しかし、所詮そのカネは密造酒や脱税から得た違法なものです。
殺人すら日常的に行われていました。
で、そんな彼の息の根を止めるべく、時の大統領フーバーの厳命を受け編成されたのが、財務省の特別捜査班、いわゆる「アンタッチャブル」です。
そして「アンタッチャブル」の主任捜査官に任命されたのが、映画でケビン・コスナーが演じた「エリオット・ネス」という人物(写真参照:Wikipediaより)で、彼の大きな活躍によって脱税を暴かれたアル・カポネは見事刑務所へ葬り去られることとなりました。
…というのがドラマや映画でこれまで語られてきた一般的内容ですが、実際はどうやらかなり違う様子。
“酒” の摘発が任務のエリオット・ネスが、生涯を通じて「重度のアルコール依存症」だったというシャレにならない話も…
「アル・カポネ」のその後
❶ 裁判開始直後のクック郡刑務所では所長や職員を買収しまくり快適生活そのもの
❷ 刑確定後のアトランタ刑務所では周囲から “デブ” 呼ばわりされ、毎日 8 時間電動ミシンで靴底を縫い合わせる
➌ 魔のアルカトラズ刑務所(上写真)に移送され風呂場の掃除係となる
❹ 若年時に感染した梅毒が悪化し痴呆症状があらわれる
➎ ロサンゼルス近郊の連邦矯正施設に移送され残りの刑期を過ごす
❻ 出所後、フロリダのパームアイランド島の自宅で家族と過ごす
❼ 1947 年、脳卒中に伴う肺炎により死亡(享年 48 歳)
「エリオット・ネス」のその後
❶ 念願の FBI には採用されず酒類取締局の首席捜査官を歴任
❷ 禁酒法廃止後はクリーブランド地方政府の公共治安本部長に就任
➌ 飲酒運転による当て逃げ事故を起こし、治安本部長を辞任
❹ 民間警備会社の会長職に就く
➎ 2 回目の離婚をし、3 回目の結婚をする
❻ クリーブランド市長に立候補して惨敗
❼ 警備会社の会長職を解任される
❽ 電気部品のセールスマンや本屋の店員をしながら食いつなぐも酒場に入り浸り借金生活
❾ 友人を通してスポーツライターと知り合ったのをきっかけに、vs カポネとの武勇伝「ザ・アンタッチャブル」を出版
❿ 印税によりネスの負債は返済されるも、ネス自身は出版前の 1957 年に心臓発作により死亡(享年 54 歳)
映画「アンタッチャブル」と実話との相違
Wikipedia
エリオット・ネスは実在の人物であるが、その実像は映画やテレビで描かれてきたものとは大きくかけ離れている。
これは晩年に多額の借金で苦しんでいたネスが、自叙伝をドラマチックに仕上げたためである。
事実は当時、連邦政府から “国家の敵 No.1” とされたカポネ摘発のための任を受けた司法省の検事、ジョージ・ジョンソンが、所得税法違反と禁酒法違反の 2 つのルートでカポネを挙げようと考え、目立ちたがり屋のネスを禁酒法チームの捜査主任に抜擢したのであるが、実際は脱税での摘発が本命で、ネスを囮に使ったのが真相であると云われる。
アンタッチャブルのメンバーは、映画ではネスが 3 人を選んでいるが、実際は財務省が任命した 11 人の役人であった。
映画には妻子ある人物に描かれているが、現実には彼が家族を持ったのはカポネの逮捕の後である。
カポネ傘下の酒醸造所を摘発しているが、銃撃戦を交えたり、メンバーが殺されたこともない。
自伝にも銃撃戦の描写があるが、メンバーは「一度も銃を撃つことはなかった」と証言している。
実際のネスのチームは誰も喪うことなく職務を全うしている(ただし、正式メンバーでないネスの運転手が殺されている)。
誰も買収には応じなかったとされているが、実際はメンバーの数人は買収されていた。
映画では、脱税での立件もネスが主導しているが、実際は脱税チームが起訴したもので、ネスの禁酒法違反容疑での立件は見送られている。
ネスが生のカポネを目にしたのは、法廷での審理が初めてである。
フランク・ニッティは映画中では死ぬことになっているが、実際は逮捕・収監されたカポネの跡を継いでボスになり、1943 年に逮捕される恐怖から自殺している。
最後に
映画「アンタッチャブル」と事実がかけ離れていてガックリ、てな方もいらっしゃるでしょうが、当時の時代背景なりを十分に知ることができますし、何よりエンターテイメントとしてはピカイチの作品です。
忠実に再現された 1900 年代前半のシカゴの街並みや、巨匠 “ジョルジオ・アルマーニ” の手がけたコスチュームデザインも必見。
まだご覧になられていない方だけでなく、すでにご覧になられた方も “実話との相違” などを意識しながら再び見直してみるのもまた一興ではないでしょうか。
VOD(動画配信サービス)のご案内
映画【アンタッチャブル】は VOD(動画配信サービス)の「U-NEXT」にて現状(2021 年 8 月現在)タダでご覧になれます。
以下記事参照
画像:「U-NEXT」より
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