【はじめに】
〖人魂のさ青なる君がただひとり 逢えりし雨夜は久しく思ほゆ〗
(雨の夜に一人で歩いていたら青白い人魂と出遭ったことを思い出します)
やれ “UFO” だ “ネッシー” だ “心霊写真” だ、などと様々な怪奇現象やその目撃談がちまたに溢れている今の世の中ですが、わが国における “大御所” と言えばやはり【人魂(ひとだま)・火の玉】でしょう。
古くは奈良時代(710 ~ 784 年)に編纂されたわが国最古の歌集「万葉集」の中(上枠内参照)にも登場しており、遊園地の「お化け屋敷」などでは今や欠かすべからざる “名脇役” です。
この【人魂・火の玉】、国内・海外を問わず古来より無数の目撃談が存在し、実際ワタクシの祖母やその兄弟たちからも、
『子供の頃は墓場で青い火の玉をよく見た』
…と聞いたこともあって、どうやら単なる “怪談” や “作り話” の類ではなさそうです。
そうしたことから、各方面の専門家たちによる独自の検証や再現実験などもこれまでに度々なされてきたようですが、果たしてこれは死者の魂の宿った “心霊現象” なのか、はたまた原理明確なる単純な “自然現象” にすぎないのか…
てなわけで今回は、この謎多き【人魂・火の玉】なるものの 正体・原因 等が一体どこまで解明されているのか、また有力説は何なのか、等々をちょいとばかし探ってみました。
とりあえず、スーパーの閉店間際に「海鮮丼」をよく買う人は必見!
ちなみに本物の【人魂・火の玉】…
個人的には一度も見たことございません。
“本物” は青色? 諸説渦巻く謎多き【人魂・火の玉】の正体や原因
いつどこでインプットしたのか、【人魂・火の玉】についてワタクシの頭の中では、やや曖昧ながらも…
〖死者を土葬した後、地中の遺体から発生した “何か” が地上の “何か” に反応して引火なり発光なりしたもの〗
との認識がなされており、また世の中としてもすでに解明され一件落着しているものとばかり思い込んでいました。
が、調べてみるにどうやらそうではない様子。
各方面の専門家から様々な説が出されてはいるようですが、どれも目撃証言との一部相違や矛盾点などが指摘されたりで何かしら決め手には欠けるようです。
その出現状況も、『雨の日に出る』『雨の日は出ない』『色は赤系』『色は青系』『高さは家の屋根ほど』『高さは地上 1 メートルほど』など実にバラエティー豊か。
個体のサイズや移動スピードなどもかなりバラつきがあるようですが、ただ多くの目撃談や文献などから、
〖長い尾を引きながらそう高くないところをフワフワと漂う青白い小さな光の玉〗
といったものが一応 “本物” たる【人魂・火の玉】の定番型だと言っていいようです。
別の視点から見れば、様々な状況下や様々な姿で現れるってことは、その発生原因・発生条件も一つではないってことを或いは示唆しているのかもしれません。
中には “自分の意思” で飛び回っているものも?
正体や原因の有力説は一体どれ ??
「流星」説・「蛍の光」説・「目の錯覚」説 など納得しがたい突飛な説も多い中で、もっともらしく聞こえるのが「リン」説・「プラズマ」説・「メタンガス」説 といった科学を根拠とした説、および、単純な自然現象たる「発光バクテリア」説 かと思われます。
これら 4 説についての概要はそれぞれ以下の通り。
「リン」説
日本では、戦後のある時期までは人が死ぬと直接地中に埋葬する「土葬」が主流であり、その際に地中の遺体より気化して抜け出した「リン」が雨水などに反応して発光したものが【人魂・火の玉】であろう、とするのがこの説。
個人的にはいつかどこかで聞いたこの説が頭の片隅に残っていたようですが、どうやらこの説は科学的にムリがあるようです。
人体(人骨)に「リン」が多く含まれるのは間違いないようですが、「リン」にもいくつか種類があって、雨水や空気などとの接触で敏感に発火なり発光なりするのは「白リン(黄リン)」と呼ばれるものなんだそうな。
が、人体(人骨)に含まれる「リン」はそれらとは性質の異なる「リン酸カルシウム」と言われるもので、上記のごとく簡単に発火・発光するものではない、とされています。
「プラズマ」説
この説は、
『世の中のほとんどのことは科学で解明できる』
と豪語し、一時はテレビ番組などにもよく出演してた早稲田大学名誉教授の《大槻 義彦》氏が一押しする説です。
1980 年代、彼は四方をガラスに囲まれた密閉容器で実験をしてみせ、そこで一瞬発生した「プラズマ」(高圧電気)を【人魂・火の玉】だとしてドヤ顔で説明したとか。
が、これは “本物” とされる【人魂・火の玉】とは特徴が大きくかけ離れており、またその発生原因を「雷」と関連付けていることからも、多くの【人魂・火の玉】についてこの説を当てはめるのはかなりムリがありましょう。
【参考動画】
〖 夏の夜の怪奇 火の玉(ひとだま)の正体は?〗
「メタンガス」説
これは、動物の腐敗時や、その他何らかの形で土の中や沼地などから発生した「メタンガス」が偶然何かに引火したものが【人魂・火の玉】であろうとする説で、これについては明治大学教授の《山名 正夫》氏が実際にリアルな【人魂・火の玉】を作り出し(上写真)、またその論文内容(下参照)からもかなり説得力あるように思われます。
簡単に言えば、
〔空気中に横方向に伸びたメタンガスの層(論文内に言うガス棒)があると仮定し、何らかの原因でそこに引火すれば、上写真のごとく本物の【人魂・火の玉】にそっくりな燃え方でガス棒に沿って移動する〕
といった内容。
《山名正夫》氏の論文
〖自由空気中に拡散する水平ガス棒中の火炎伝播 一燃焼現象としての “ひとだま” 一〗(PDF)
ただ、《山名》氏自身も論文の最後で以下のごとく述べているように、これはすべての【人魂・火の玉】について説明のつくものではありません。
ガス棒にどうして自然に火がつくのか、その機構が疑問である。
また “ひとだま” の中には、発光バクテリア系の光りものが風にふかれて飛んだり、あるいは “ひかり病” にかかった蚊の集団が “ひとだま” に見えたと考えられる例がある。
いずれも今後の研究の対象として残る。山名氏論文より一部抜粋
「発光バクテリア」説
“科学” を根拠とした説がズラリの中、単純ながらも結構的を射てそうなのが、“蚊柱” が光ったものだとする説。
夏場、夕暮れ時の田んぼ道などで顔にまとわりついてくるあのうっとおしい蚊の大群を “犯人” とする説です。
コヤツたち、時に「発光バクテリア」なる細菌をまとっていることがあるらしく、暗い中、その状態でひとかたまりになって漂っているとまさに本物の【人魂・火の玉】そっくりに見えるんだとか。
これは実際に【人魂・火の玉】を虫取り網で捕まえた人がいて証明もなされています。
以下は昆虫学者の 故《春田 俊郎》氏が自身の経験談として某昆虫雑誌に紹介したもの。
山でガの夜間採集中に人魂に出合い、勇気をふるってこれを捕虫網で捕らえた。
網の中でなお青白く光っていたそれは、なんとユスリカのような小さい虫の群であった。人魂の形状からこれはおそらくある種の蚊柱と思われる。 羽化する時に偶然発光バクテリアを体に付け、オスが群飛してメスを呼び込むための蚊柱を形成したことで人魂と化したのであろう。すべてではないにせよ、 これが人魂の正体のひとつであるに違いない。事実、「人魂が蚊に化けた」という古い記録もある。雑誌『新昆虫』より
最後に
結局、結論としては未だ完全解明なされていない【人魂・火の玉】。
やはりその原因はひとつではなく複数あって、中には理論上解明できぬ霊的なものも現実に存在するのかもしれません。
人は死んだ瞬間 “魂” の重さ分(21g)だけ体重が軽くなる、てなことを実証した研究者もいるとかいないとか…
何でも科学の力なり何なりですぐに真相究明したがる現代社会ですが、謎と不思議に満ち満ちた世の中もそれはそれで楽しいもの。
「ゲゲゲの鬼太郎」のように【人魂・火の玉】を天ぷらにして食べたら意外にうまかったりして。(笑)
あ、それと…
時間の経った「海鮮丼(イカ使用)」は一度部屋を真っ暗にし、青白く光ってないかを確認してから食べましょう !
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