昭和日本の脱獄王 白鳥由栄(しらとりよしえ)の人生実像大解剖!
白鳥由栄…
宝塚歌劇を思わせる美しげな名前からは想像も及ばぬ屈強そうなこの男。
一般社会からはとっくに忘れ去られた存在かもしれませんが、刑務所関係者、特に看守をされている方々の中では今もって伝説的人物として知られているのではないでしょうか。
別名「昭和の脱獄王」。
強盗殺人の罪で投獄された彼は、青森、秋田、網走、札幌、の計 4 ヶ所にも及ぶ刑務所を、パワーと頭脳による神業的テクニックで次から次へと脱獄していき世の人々をアッと驚かせました。
北海道の「博物館網走監獄」を見学されたことがある方なら頭上に設置されたリアルなフンドシ男の人形(写真参照:Wikipedia より)を覚えていらっしゃるのではないでしょうか。
あれはまさに白鳥由栄の脱獄シーンを再現した 1 コマなのです。
凄まじい怪力の持ち主だったらしく、網走刑務所では手錠の鎖をパワーで引きちぎったという武勇伝もあり、また、体中の関節を外せるといった驚異的なワザも持ち併せていて、頭の入るスペースさえあればどこからでも簡単に脱け出すことが可能だったそうです。
もはや人間かどうかを疑ったほうがいいかもしれません。
当時は収監者に対する人権への配慮など無きに等しい時代。
酷い扱いに抗議した白鳥に待っていたのは更なる過酷な懲罰でした。
彼を度重なる脱獄に走らせたのは、こうした虫けらのごとき扱いが原因だったとされています。
白鳥由栄の波乱なる刑務所人生
1907 年(明治 40 年)に青森で生まれた白鳥由栄は、豆腐屋の養子となるものの、次第に素行不良が目立つようになります。
そして 20 代半ばの 1933 年、仲間と強盗殺人を犯したのを境に、彼の刑務所人生、脱獄人生が幕を開けました。
白鳥のその後については、時系列にて以下のごとし。
白鳥由栄の初収監から他界(死因:心筋梗塞)まで
① 1935 年 8 月、自首と同時に逮捕された白鳥は同年 12 月、青森刑務所に収監。
② 翌年 6 月、拾った針金で合鍵をつくり青森刑務所を脱獄。
③ 3 日後に逮捕され、再び青森刑務所へ舞い戻り無期懲役が確定。
④ 1937 年より過ごしていた小菅刑務所(現東京拘置所)を離れ、1941 年 10 月に秋田刑務所へ。
(小菅刑務所では扱われ方に不満はなく脱獄せず)
⑤ 翌年 6 月、錆びた釘とブリキ板をあわせて作った簡易ノコギリで天井の鉄格子を切り取り、秋田刑務所を脱獄。
⑥ 約 3 ヶ月後、小菅刑務所時代に信頼を寄せていた某職員の自宅を訪ねたのがきっかけとなって、その翌日に自首。
⑦ 1943 年 4 月、網走刑務所に移監され、凶悪犯用の特別房に入れられる。
(ここでの扱われ方は特に酷かったようで、食事の際も手足の拘束を解かれることはなく、汚物まみれになりながら犬のように食べさせられていたそうです)
⑧ 翌年 8 月、味噌汁の塩分で手錠などの鉄を根気よく錆びさせ、さらには関節を脱臼させるなどして天井の採光窓より網走刑務所を脱獄。
⑨ その後約 2 年間、山にこもり逃亡生活。たまに麓の村などに下りては食べ物や着るものなどの盗みを繰り返す。
⑩ 1946 年 8 月、スイカ泥棒と間違って殴りかかってきた農夫に反撃し殺害。
⑪ 1947 年 2 月、逮捕され、死刑判決を受けたのち札幌刑務所に収監。
(高裁で傷害致死が認められたため死刑判決は破棄され、懲役 20 年に)
⑫ 同年翌月、再び釘を利用した即席ノコギリを作製し、床板を切り取って札幌刑務所を脱獄。
⑬ 1948 年 1 月、札幌で職務質問を受け逮捕。
⑭ 同年 7 月、府中刑務所に収監。府中刑務所の扱いに不満はなく、以後模範囚として1961 年 12 月まで服役。仮出所後は建設作業員として生計を立てる。
⑮ 1978 年 2 月、心筋梗塞により 71 歳にて他界。
最後に(名言 他)
ザックリ記しただけでしたが、彼の波乱なる刑務所人生がある程度お分かりいただけたのではないでしょうか。
「罪」を犯せば当然に「罰」を受けなくてはならないのが法治国家の原則ですが、社会から閉ざされた刑務所内部には「権力」「暴力」「人権」などといった問題が絶えずつきまとっていました。
白鳥由栄の度重なる脱獄は、刑務所組織に根付いていた悪しき慣行などを大きく見直すきっかけになったともいわれており、そういった意味では社会的意義 ? のある脱獄劇だったのかもしれません。
『人間のつくった房ですから人間が破れぬはずありませんよ』
とは、彼の残した名言なり。
「タコ部屋」についての以下記事も興味あればご覧下さい。
お時間ある方はごゆるりとご堪能下さいませ。
ほんの2時間ほどございますが…
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「昭和の脱獄王」白鳥由栄をモデルとした小説があるのをご存知でしょうか?
吉村昭 著の「破獄」です。
吉村流の綿密な調査で、白鳥由栄の生い立ちやその背景、刑務所内部の様子や驚愕の脱獄手法など細部にわたってリアルに描かれており、映像化もなされた人気の小説です。
個人的には眠気も吹き飛び一気に読破してしまいました。
同氏の著作、「羆嵐」や「高熱隧道」などとも併せ、ぜひオススメいたします。
【参考動画】
〖記録文学の大家・吉村昭の世界〗
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Amazon 読者レビュー(一部抜粋)
・脱獄王の話、それを防ごうとする刑務官たちの話、戦中戦後の刑務所事情の話が巧みに絡み合い、最後まで飽きることなく読めた。
・体力、知力、精神力などに畏怖を感じた。正しい方向に進んでたらスポーツ、ビジネスでも活躍出来たでしょうね。
・最終的に仮釈放まで辿り着きハッピーエンドを迎えて気持ち良い読後感が残った。
・四回の脱獄を繰り返した主人公の類稀な体力、知力に驚く。
・白鳥由江の策や身体能力・忍耐能力全てにおいて脱帽です。
・数回の脱獄方法の内容が実に痛快であり、あっと言う間に読破し再度読み返しました。
・原作のほうは、やはりドラマと違って獄中生活や脱獄の方法が詳細に書かれています。
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Amazon 視聴者レビュー(一部抜粋)
・文句無しの緒形拳の凄さ。百聞は一見にしかず。
・全てにおいて買って良かった。
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・緒形拳さん主演の映画はいっぱいありますが私のベストです。
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