墜落原因は虫⁉蜂が計器と操作を狂わせた有名な飛行機事故の背景詳細とは

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墜落原因は虫⁉
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【はじめに】

イメージ

数ある乗り物の中で “最も安全” と言われている現代の旅客機。

ハイテクを駆使した二重三重からなる安全システムに守られ、重大事故などそう滅多に起こるものではありません。

そうした中、1996 年 2 月に発生した「バージェン航空機」の墜落事故。

念入りな事故調査の結果、決定的証拠は未発見ながらも、状況等から乗客乗員 189 名全員を “殺害” したその犯人は、小さな “ハチ” の可能性が最も高いと結論付けられました。

一体どういうことなんでしょうか。

てなわけで、今回は “ドミニカ共和国発ドイツ行き”【バージェン航空 301 便】が、離陸した直後に墜落に至ったその背景等をご説明。

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【バージェン航空 301 便】とは

1995年撮影の事故機(ボーイング 757) Wikipedia より

「バージェン航空」(事故後倒産)とは、トルコに本社を置いていたチャーター便を扱う航空会社で、事故を起こした 301 便(上写真参照)バージェン航空が他社からリースしていたものをさらにドミニカ共和国の某チャーター便運行会社(事故後倒産)にリースすることによって運営されていました。

いわゆる “又貸し” ってやつです。

301 便の予定ルートは、ドミニカ共和国の《プエルト・プラタ》からドイツの《フランクフルト》へ向かうといったもので、途中にカナダの《ガンダー》とドイツの《ベルリン》にも立ち寄るといったもの。(以下地図参照)

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離陸から墜落までの流れ

 1996 年 2 月 6 日、23 時 42 分、ドミニカ共和国のプエルト・プラタ空港を離陸滑走。

両操縦席にある「対気速度計」のうち、機長席側の速度計はすでにこの時点から異常な数値(実際よりも速い数値)を示していたが、そのまま滑走を続け正常に離陸。
V1 に達する以前に計器トラブルを認識していたのであれば、そのまま離陸したのは機長の重大な判断ミス。

「V1(ブイワン)とは「離陸決心速度」とも言い、離陸を安全に中止可能な最大速度のことです。
これを超えると滑走路内に停止することができないため、逆に離陸を続行しなければなりません。

 高度 1400㍍ 付近を上昇中、“速度超過” を検知した自動操縦システムが速度を落とすため機首を上げ始める。

副操縦士側の速度計は全て正常値を示していたが、自動操縦システムに組み込まれていたのは機長席側の速度計だったため、“下げてはならない” 速度を自動操縦システムが “下げねばならない” と判断してしまった。
すぐさま誤報たる “速度超過警報” も鳴り始めた。

 機首上げ動作が限界に達した結果自動操縦システムが自動解除され、あとの操作はパイロットに託された。

 手動で操縦を始めた機長は、スピードをさらに下げるためエンジン出力すらも下げた。

 突如 “失速警報”(正しい警報)が鳴り始め、機長はワケが分からずパニックに。

誤った速度情報をもとに自動操縦システムが機首を上げ続けたうえ、さらにダメ押しで機長がエンジン出力を絞ったことからもはやこの時点で墜落寸前。

一般的な飛行機には通常「スティックシェイカー」といった警告装置も備わっており、これは機体の失速直前に操縦桿が素早く小刻みにガタガタと振動し、パイロットに “早く対処せんかい !!” と促す機能です。

 相反する警報速度超過 & 失速でもはや正常な判断力を失っていた機長は、すぐさまスピードを上げるべく “機首を上げたまま” の状態でエンジン出力全開に。

これは大きな間違いで、スピードを上げるためには機首を水平にするか下げるかしなければならなかった。(下画像参照)

 機首が大きく持ち上がった状態だったため必要な空気量がエンジンに取り込めず、片方のエンジンが自動停止。(上画像参照)

不運にももう一方のエンジンは自動停止せず、機長の操作通り MAX パワーに。

一般的な旅客機は、片方のエンジンが止まってもコントロールできるように設計されており、パイロットにもそれを想定した訓練がなされます。
なので、“通常飛行をしている場合” であれば “片方のエンジンが停止=即墜落” となるわけではありません。
さらには、全てのエンジンが停止したとしても、“機首上げ” などによる失速さえなければ “真っ逆さまに墜落” となるようなこともなく、通常はグライダーのように滑空飛行ができるよう設計もされています。
その場合、滑空可能なエリア内に着陸できる場所があるかどうかで搭乗者の運命は大きく変わります。 

 空中にて機体がスピンし、“対地接近警報” がコックピットに鳴り響いたその 8 秒後、太西洋の海面に激突。

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【バージェン航空 301 便】墜落の原因とは

上写真の ですが、これは剃り残しのヒゲなどではなく「ピトー管」と言われる 「対気速度」を測定するための装置です。

事故機のピトー管は回収できなかったものの、事故調査委員会があらゆる方向から検討した結果、墜落の直接的原因はプエルト・プラタ空港周辺に生息する「ドロバチ」がピトー管の中で巣を作ったことによる可能性が最も高い、と結論付けられました。

目立たない小さな装置ですが、その内部に異物が侵入したりすると正確な計測ができなくなって、最悪こうした事態にまで発展してしまうのです。

気温が氷点下に達する上空ではピトー管が氷で閉塞してしまう可能性もあるため、電熱線などによる防氷システムが備わっているケースが多いとのこと。

本来駐機中にはピトー管にカバーを取りつけておくのが原則だそうですが、事故機ではその直前の 25 日間ずっと忘れられていたそうで、その間にドロバチが巣を作ってしまったのであろう、ということです。

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飛行機で用いられる 速度」「対速度」のうち、重要とされるのは前者。
車や電車など、地上の乗り物が “走る” ためには別段空気の状況など気にする必要はないため、“速度” と言えばほぼ移動距離と時間から算出された「対地速度」のことを言います。
一方、飛行機が安全に “飛行” するためには、航空力学上刻々と変化する空気の流れを計算に入れた速度、言い換えれば “鉄の塊を宙に浮かすため、あるいは宙から落とさないため速度” をリアルタイムに知ることが最も重要となります。
例えばコックピットの「対気速度計」が 800㎞ を表示していても、時速 50㎞ の向かい風の中を飛んでいたならば「対地速度」は時速 750㎞ 。
つまり、1 時間後に辿り着けるのは 750㎞ 先ってことです。
到着時間の算出などから「対地速度」を知ることも大切ですが、“命” に直結するのは「対気速度」の方なのです。

駐機中はカバーが取り付けられるピトー管ですが、整備などで機体を洗浄する場合には穴を完全に密閉させるためマスキングテープが貼られます。
同じ年、同じ型(ボーイング 757)アエロペルー 603 便全員死亡の墜落事故を起こしましたが、これはそのマスキングテープを機体洗浄後にはがし忘れたことによる計器トラブルが原因でした。

また、2009 年に起きたエールフランス 447 便(エアバス A 330)墜落事故(全員死亡)は、ピトー管が凍結して速度計が動かなくなり、“失速警報” に対し未熟な副操縦士が “機首上げ” をしてしまったことがその原因とされています。

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「ピトー管」ってどんなもの ?

エアバス A380 のピトー管 Wikipedia より
ピトー管の内部構造 Wikipedia より

ピトー管の基本的な構造は二重になった管からなり、内側の管(画像の白部分)は先端部分に、外側の管(画像の黄色部分)は側面にそれぞれ穴が空いている。
二つの管は奥で圧力計を挟んで繋がっており、その圧力差を計ることができるようになっている。
Wikipedia

で、この圧力差+その他もろもろをコンピューターで計算処理すると正確な「対気速度」が割り出されるってわけです。

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「ドロバチ」とは

ドロバチ Wikipedia より

ドロバチはスズメバチ科に属し、3500 種以上確認されているうち日本では 50 ~ 60 種程度が記録されている。
多くの種が巣作りに際して泥を利用することからドロバチの名がある。
多くの種は幼虫の餌の貯蔵と産卵を行った後に開口部を塞いで巣を密閉する
人口物の穴に営巣する場合があるため、時に事故の要因となり得る。

Wikipedia

「ピトー管」に関連する他の航空機事故

【アウストラル航空 2553 便墜落事故】
1997 年 10 月 10 日、アウストラル航空の DC-9 がウルグアイ川沿いの沼地に墜落した。
ピトー管が氷結し速度計の数字が落ち始めたため、パイロットは推力を増大させた後にスラット(両翼の前縁から伸び出す揚力増大装置 画像参照を展開した。
スラットにより翼の気流が乱れ機体はコントロールを失い時速 1200km で墜落、搭乗していた 74 人全員が死亡した。

Wikipedia

【チャイナエアライン佐賀空港オーバーラン事故】
2007 年(平成 19 年)10 月にチャイナエアラインのボーイング 737 型機が佐賀空港の滑走路をオーバーランして離陸した後、計器異常により引き返すトラブルが発生した。
原因は、ピトー管の管内に虫が入り込んでいたためであった。
このようなトラブルを防ぐために、航空機は地上駐泊する際にはピトー管の先端にはカバーを掛ける事になっているが、トラブルの発生した当該機は予定では当日中に折り返しのフライトを行うプランであったためにカバーを用意しておらず、カバーを掛けないまま駐泊していたのが原因であった。

Wikipedia

以下記事のラスト【おまけ】にて、わが国最大の航空機事故「日航 123 便墜落事故」の “気になる話” を軽く掲載しております。
気になる方はぜひどうぞ。



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おまけ(旅客機の豆知識)

重い飛行機がなぜ宙に浮く ?

数百トンもある巨大な飛行機が空を飛べるのは「ベルヌーイの定理」の応用によります。(画像参照)

翼の上面と下面に分かれた流体は、同じ時間をかけて表面を通過し、後方で同時に合流します。

上面は下面よりも距離が長い分、必然的に下面を流れる流体よりもスピードが速くなります。

すると「ベルヌーイの定理」により、上面の流体の圧力が低くなります。

この上下の圧力差から、翼は重力に逆らって圧力の小さい上の方へと引き寄せられ、宙に浮くことができるのです。

この上向きの力のことを「揚力(ようりょく)といいます。

大きな揚力を得るためには速い空気の流れが必要であり、そのために備わっているのが “エンジン” や “プロペラ” ってわけです。

機長席ってなぜ左側 ?

法的な決まりは特にありませんが、船舶同様すれ違う際には飛行機も “右側通行” と定められているため、相手機を目視しやすいよう責任者たる機長が左側に座る、と全世界共通で慣例化されています。

主翼先端のライトはなぜ左右で色がちがう ?

正面衝突寸前 !

どの飛行機にも主翼や尾翼の先端には夜間でも認識できるようそれぞれナビゲーションライトが取り付けられていますが、右主翼は、左主翼は、尾翼は、と世界共通で定められています。

これは装飾目的でカラフルにされているのではなく、二機が空中で接近した際などに相手機の進行方向を即座に見分けられるようにするためです。

雲の間からいきなり前方に飛行機が現れた場合、左側にのライトが光ってたら一大事です。(画像参照)

正面衝突を避けるため、両機のパイロットは即座に右旋回しなくてはなりません。

機長と副操縦士は食事メニューが別 ?

場合によってはパイロット達も機内で食事をとりますが、メニューは別々のものにしなくてはなりません。

調理人すらも別々です。

これもひとえに “安全” を重視した上でのことで、万一食材等に問題があったとしてもパイロット両名が共倒れにならぬよう配慮されているためです。

“機長はエライから副操縦士よりイイものが食べれる” ってことではありません。

客席の「酸素マスク」って何分もつの ?

【参考動画】(約 1 分)

〖全日空機 “緊急着陸” 機内の減圧示す計器が作動〗(ANN ニュース)

緊急事態などで座席上部より落ちてくる「酸素マスク」ですが、酸素の供給時間は通常 10 分強で、長いものでもせいぜい 20 分強、とされています。

極端に短く思えますが、これは一般的な巡航高度(約 1 万㍍)から “酸素マスク不要な高度” (約 3000㍍)緊急降下する間だけに必要とされるものなのでこうした短い時間でも何ら問題はないのです。



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アナトミアン

旅好き、乗り物好き、自然好き、ぼぉ~っとする時間好き、映画好き、クラシック好き、読書好き、お酒好き、コーヒー好き、甘い物好き、宇宙好き、カメ好き…etc
な、兵庫県在住中年オヤジ。
コロナで外出できない中、たまたま見た動画をきっかけに、暇つぶしとばかり興味のかけらもなかったブログ界に足突っ込む。
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