【はじめに】
春が訪れ、花々の開花と同時にヒラヒラと舞い始める色とりどりの蝶たち。
可憐でか弱いイメージの蝶ですが、実際彼らのほぼ全ては生まれ育ったその周辺において短い生涯を終えます。
が、日本においてただ 1 種、ある意味「最強」ともいえる蝶がいるのをご存じでしょうか ?
てことで、昆虫好き、蝶好きの方にはもはや説明するまでもない、 “渡り蝶” として有名な「アサギマダラ」のご紹介です。
アサギマダラの基本生態
アサギマダラとは、羽を広げると 10㎝ 前後にもなる大型の美しい蝶で、“渡り蝶” として海を隔てた信じがたい距離を旅することから有名となりました。
他国との行き来もするアサギマダラですが、学名の「パランティカ・シータ・ニッポニカ」からもわかるように、れっきとした日本 “国籍” の蝶です。
惜しくも「国蝶」の選定からは外されましたが…
羽の特徴である「浅葱色」した「まだら模様」から単純に「アサギマダラ」と名付けられたようですが、「浅葱色」とは日本古来にいう「青緑色」のことをいいます。
アサギマダラの寿命は羽化後 4 ~ 5 ヶ月と蝶にしてはかなり長いものの、暑さも寒さも苦手で、滞在地が不快な気温になると即サヨナラするご様子。
平地が暑くなれば高原などに移動し、寒さを感じる 10 月頃になれば南の島に脱出するといった、どこか羨ましい生活をなさっております。
あまり羽を動かさずフワフワと優雅に舞うことが多いようですが、幼虫時の食事より摂取蓄積している毒素(アルカロイド)のおかげで、鳥などにパクリとされることはめったにないそうです。
元は本州以南でしかみられなかったアサギマダラですが、ある時期より北海道南部でも捕獲されるようになりました。
温度変化に敏感なことから “地球温暖化” との関連が指摘されています。
マーキング調査にみるアサギマダラの実態
当初は「場所を転々としながら生活しているようだ」くらいの認識でしかなかったアサギマダラですが、1980 年代にマーキングによる調査が始まって以降はその実態が少しずつ明らかとなってきました。
マーキングによる調査とは、捕獲したアサギマダラの羽の白っぽい部分に「現在地」や「日付」などを記載して放ち、それがどこかの地で再び捕獲されればそこに到るまでの状況が推察できる、といった単純明快な調査法です。
原始的で運任せに思えますが、国境を越えた協力体制やネットワークの充実などによって、飛行距離や飛行日数など、これまでに多くのデータが集められています。
写真:Wikipedia より
アサギマダラの目的地は ?
国外では台湾あたりで多く捕獲されるようですが、さらに遠くの香港などでも発見されており、一説には中国広東省の山奥あたりが最終目的地ではないか、ともいわれています。
(中国社会はアサギマダラにこれといった関心はないようで、地域民の協力のもと詳しいデータを得るのは現状困難なようです)
アサギマダラの飛行距離は ?
前述の香港で捕獲された個体が現時点(2021 年 5 月)では最長記録のようで、2011 年の 10 月に日本の和歌山県から放たれたものです。
飛行日数が 83 日で飛行距離はなんと約 2500㎞ !
当時の(今でも ??)世界ランキング第 2 位だとか。
ちなみに 1 位は「オオカバマダラ」が打ち出したアメリカ-メキシコ間の 3300㎞ だそうです。
アサギマダラの飛行ルートは ?
まだまだ解明の難しい飛行ルートのようですが、マーキングと捕獲によって漠然とはわかってきたようです。
いくつものパターンが存在するようですが、南下する場合を例にあげれば、紀伊半島あたりに集結 ➡ 高知県に移動 ➡ 最適なタイミングを見計らって室戸岬や足摺岬などから一斉に出発 ➡ いくつかの島々を経由しながら最終目的地に向かう、てな感じが多いようです。
アサギマダラの中継地として有名なのが、大分県国東半島沖の「姫島」(下写真)や奄美大島の東にある「喜界島」で、「姫島」などは NHK の人気番組で紹介されて以降、春と秋の一時期にはアサギマダラ目当ての観光客がどっと押し寄せるようになりました。
ちなみにその寿命から、秋に「南下」した個体が春に再びやってくることはありえず、その逆もまたしかり。
一生に一度だけ可能な片道旅行ってわけです。
さらに、「南下」のルートと「北上」のルートはまったく異なるらしく、暖かい黒潮の上昇気流や上空の季節風などを活用したり、あるいは回避したりと何かしらの自然現象が関係しているのかもしれません。
最後に
彼らは “鳥” ではなく “蝶” です。
どういったルートをとるにせよ大海原上空の過酷な飛行は避けて通れず、弱々しそうな体のどこにそんなパワーがあるのか、と誰もが不思議に思うことでしょう。
漁師からの「海面に漂いながら休息していた」といった目撃談もあるようですが、それはそれでまた驚きです。
ただ、仮に休憩はできたとしても海にお花畑などはなく、長期に渡るエネルギーの補給はどうしているのかなど詳しいことは一切わかっていません。
命の危険を冒してまで 1000㎞ や 2000㎞ もの大移動をするその目的は、単に “快適な気温を求める” といった本当にそれだけのことなんでしょうか…
今後の実態解明に期待したい、謎多きアサギマダラの世界です。
【参考動画】
〖アサギマダラの謎を追って〗
〖旅するチョウ「アサギマダラ」~東山動植物園~〗
人気アニメ「鬼滅の刃」が見放題 !?
アサギマダラをアニメ「鬼滅の刃」の人気キャラ(胡蝶しのぶ)で知った方も多いのではないでしょうか。
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以下記事参照
画像:U-NEXT より転載
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