過酷な勤務地と生活実態 観音埼に始まり女島に終わった日本の灯台守

〖ひまつぶし系記事〗
心身崩壊・家族崩壊・自殺… 過酷な地の灯台を住み込みで守った灯台守
〖ひまつぶし系記事〗
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【はじめに】

大瀬埼(おおせざき)と大瀬埼灯台 Wikipedia より

神経衰弱、ヒステリー、狂い死に…

勤務地により多少ちがいはあったかもしれませんが、わが国で「灯台守(とうだいもり)をしていた方々のご家族にとって、概ねこれらはよくあることだったようです。

また、「灯台」は戦時中敵艦の発見や見張り役も担っていたことから爆撃の標的ともされ、何人もの職員やご家族の方がお亡くなりになられました。

システムの自動化に伴って「灯台守」といわれる人々は日本にはもう存在しませんが、人里離れた孤独な環境と過酷な自然の中で、命を張って灯台と航海の安全を守り抜いてきた彼ら、及び彼らのご家族が味わった辛い日々は察するに余りあります。

今回は、そうした元「灯台守」とそのご家族、および現保全管理者たる「海上保安官」の方々に敬意を表しつつ、灯台についてのアレコレをご紹介いたしましょう。

上写真の大瀬埼(長崎県 五島列島 福江島)は、太平洋戦争時、出征した多くの将兵が “最後の見納め” とした日本の地です。
西暦 664 年、遣唐使船の安全航行のために、昼はのろし、夜はかがり火、を焚かせたのが大瀬埼灯台の起源とされ、日本初の灯台ともいわれています。
1945 年に米軍潜水艦による砲撃を受けたそうですが、丸屋根を貫通しただけでレンズは無事だったとか。
灯台右下の建物(画像 に昭和末期頃まで灯台守の方が住んでらっしゃったようですが、写真だけでも過酷を極めたであろう厳しい生活が十分に想像できます。

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「灯台」とは

基本周囲に何もなく、島や岬の端っこにひっそりと佇むシンプルな建物「灯台」

にもかかわらず、それに魅せられる人は数多く、みなさんも旅先などで一度や二度は訪れたことがあるのではないでしょうか ?

多くの灯台では息をのむような絶景が味わえ、訪れる人もそれを目的とするのがほとんどでしょうが、当然灯台は “観光施設” ではありません。

夜間、海上を航行する船舶が自分の位置を知り、進むべき方向を見定めるための重要な指標となる存在です。

その重要性は、戦後、GHQ が「一般命令第 1 号」の中で、自分たちが破壊した灯台を即座に復旧するよう指示したことからもお分かりになりましょう。

島国である日本は、船舶に注意等を促す「航路標識」といわれるものがことのほか多く、灯台だけでも 3125 基、灯標(とうひょう)や浮標(ふひょう)等その他すべてをあわせると 5153 基にものぼります。(令和 3 年 3 月 31 日時点 海上保安庁統計)

そして世界一古い灯台はというと…

日本で小さな集落と稲作がようやく根付いてきた弥生時代、エジプトに世界最古ともいわれる超ド級の灯台が出現しました。

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「灯台」の起源

灯台の歴史は古く、文明の発達していた他国においては紀元前より存在していました。

灯台の役割を果たしたもの、として最も古いとされているのは “紀元前 7 世紀にナイル川河口の寺院の塔で火が焚かれたもの” のようですが、本格的な灯台として最も古いとされているのは  “紀元前約 300 年頃にエジプトのアレクサンドリア港の入り口に建造された「ファロス灯台(アレクサンドリアの大灯台)”  だといわれています。
※ 起源については資料等によって微妙なちがいがあるためイマイチはっきりしませんが…

“世界七不思議のひとつ” ともいわれる「ファロス灯台」高さ約 135 メートルにもなる巨大なものだったそうで、当時ではギザの大ピラミッドに次ぐ高さだったとか。

約 20 年かけて建造され、1000 年以上もの長きに渡って存在したそうですが、度重なる地震によって完全に崩壊してしまったそうです。

“鏡の反射光で敵の船を燃やした” 等真偽不明の伝説もチラホラ。

内部にらせん状の階段が設けられていて、ロバが頂上まで薪を運んだと考えられています。

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日本最古の「西洋式灯台」

日本における西洋式灯台第 1 号は 1869 年(明治 2 年)に初点灯した神奈川県横須賀市の「観音埼(かんのんさき)灯台」(上写真左)で、1866 年にアメリカ・イギリス・フランス・オランダと結んだ「江戸条約」によって建設を約束した 8 つのうちのひとつです。

1923 年(大正 12 年)、初代観音埼灯台が地震で被災したため取り壊して新たにコンクリート造のものに建て替えられましたが、なんと関東大震災によって半年後に崩壊。

「二代目観音埼灯台」は幻ともいえる存在です。

1949 年、初代観音埼灯台の着工日である “11 月 1 日” が海上保安庁によって「灯台記念日」と指定されました。

1998年 11 月 1 日、第 50 回灯台記念日の行事として海上保安庁が募集し、一般の投票によって「日本の灯台50選」が選ばれました。
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「灯台守」とは

大半の方は、やはり天気の良い日に観光目的で灯台を訪れることかと思われますが、その立地から荒天時の状況をぜひ想像してみて下さい。

灯台に併設・隣接した建物を住まいとしながら、その整備や保全管理を使命とする過酷な職業が世界各地、海に面した国の多くにはまだまだ存在しています。

「灯台守」といわれる人達です。

民間委託など形態は国によって様々ですが、日本の場合は終戦までは「逓信省(ていしんしょう)灯台局」が、終戦後は「海上保安庁」が全灯台業務を所管したため、それら職員たる灯台守はすべて国家公務員でした。

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日本最後の「灯台守」

灯台守の過酷な生活は〖喜びも悲しみも幾歳月〗といった映画などでも描かれ、すでにご存知の方も多いでしょう。

ただ、いつぞやより灯台の自動化が順次推し進められ、2006 年 11 月、長崎県五島列島の「女島灯台」(上写真)を最後に全ての自動化が完了し、それに伴ってわが国の灯台守もその役割を終えることとなりました。

周囲の海は一年中荒れ、見上げるような断崖が続き人口はゼロ…
猛者ぞろいの灯台守といえども、さすがにこのような環境下で何年も住まわされることはなかったらしく、「女島灯台」へは職員 4 人が 10 日交替で派遣されていたそうです。
とはいえ普通の人ならその 10 日すらもたないでしょうが…
同じ五島列島の「大瀬埼灯台」(前述)の 5 倍もの総工費がかかったそうで、女島での灯台建設がいかに難工事だったかがうかがい知れます。
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最後に

「宗谷」Wikipedia より

余談ながら、初代南極観測船として有名な「宗谷」は『燈台の白姫』といった愛称もあり、灯台守の家族に物資などを運ぶ “灯台補給船” としての役割を担っていた時期もありました。

現在は東京都品川区にある「船の科学館」にて展示公開されております(上写真)ので機会があればぜひ !

「宗谷」は南極観測船以外の顔もスゴイ !
詳しくは以下記事にて

今や伝説昭和日本の有名な船 宗谷 南極観測船以外の凄い歴史や活躍とは
日本の初代南極観測船として有名な「宗谷」。戦前より、商船、海軍特務艦、復員船、引揚船、灯台補給船、とそれ以外の活躍も多数あり、数々の修羅場を潜り抜けた奇跡の船としても有名です。今回は昭和日本を代表する船「宗谷」の南極観測船以外の顔をご紹介。


尚、以下画像は〖国立国会図書館〗所蔵の書籍【我等の燈臺守】から抜粋したもので、当時の灯台守の実態がリアルに記されています。

古い書籍でスラスラとは読みづらいかもしれませんが、興味がおありならアクセスして全文のんびり読んでみて下さい。

読み放題 & タダですので(笑)

一部抜粋
一部抜粋

【我等の燈臺守】
〖国立国会図書館〗


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オススメ映画【喜びも悲しみも幾歳月】

U-NEXT より

【ストーリー】
昭和 7 年。新婚の灯台守・有沢四郎と妻・きよ子は、東京湾の観音崎燈台に赴任する。その後、北海道の石狩燈台、五島列島の女島燈台と転任を重ねる間に、子供が生まれ、夫婦げんかをし、同じ灯台守と親交を深める。昭和 16 年、灯台守たちにも戦争の影が差し…。

U-NEXT

上映画【喜びも悲しみも幾歳月】は動画配信サービス「U-NEXT」にて現状(2021 年 12 月現在)タダでご覧になれます。

古い映画ですが、まだ見られたことのない方はぜひ !



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