今や伝説昭和日本の有名な船 宗谷 南極観測船以外の凄い歴史や活躍とは

〖ひまつぶし系記事〗
~ 奇跡の船 ~ 〖宗谷〗 南極観測船以外の凄い活躍とは
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【はじめに】

1957年(昭和 32 年) 第二次南極観測出発直前の宗谷 Wikipedia より

日本の『南極観測船』としてあまりにも有名な【宗谷(そうや)

おそらくご存知の方は多いでしょう。

ところがこの【宗谷】『南極観測船』としての役割を担ったのは 1956 年(昭和 31 年)から 1962 年(昭和 37 年)までのたかだか 6 年間で、戦前、戦中、戦後、の長きに渡ってあらゆる場面で活躍した、まさに “昭和日本” を代表する船だったのです。

【宗谷】は元はといえば戦前、ソビエト通商代表部に「商船」として引き渡すはずであった 3 隻のうちの 1 隻で、船名も当初は【ボロチャエベツ】

ところが戦争直前の際どい国際情勢から引き渡しはなされず、船名も【地領丸】と改められ、わが国において「商船」としてデビューすることとなりました。

しかしながら、すぐさま日本は戦争へと突入し、【地領丸】も海軍の「特務艦」として過酷な戦場へと駆り出されることとなり、その後は波乱に満ちた人生(船生 ?)を歩むこととなります。

てなわけで、今回は “奇跡の船” ともいわれる【宗谷】『南極観測船』以外の顔をザックリとご紹介しましょう。

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【宗谷】の概要・略歴

❶ 1936 年(昭和 11 年)

ソビエト通商代表部からの注文を受け長崎県の造船所にて起工。

❷ 1938 年(昭和 13 年)

竣工 & 進水。

全長約 82m、最大幅約 13m、総トン数約 2200t、といった小回りの利くサイズ(全長=戦艦大和の約 1/3)で、姉妹船【天領丸】&【民領丸】とともにソビエトへの引き渡しはなされず日本の商船【地領丸】としてデビュー。

❸ 1939 年(昭和 14 年)~ 1945 年(昭和 20 年)

帝国海軍に「特務艦」として徴用・買上げされ、船名を【地領丸】から【宗谷】に改める。

戦時中は測量や輸送等の雑用船として激戦地を転々とし、敗戦後は一旦 GHQ の管理下に。

❹ 1945 年(昭和 20 年)~ 1948 年(昭和 23 年)

GHQ から大蔵省へと引き渡され、船名を【宗谷丸】と改めたうえ「復員船」として使用。

次いで民間組織へと引き渡され、「引揚船」として使用。

➎ 1950 年(昭和 25 年)~ 1955 年(昭和 30 年)

海上保安庁に移籍され、船名を【宗谷丸】から再び【宗谷】に戻す。

改装の後、日本各地の灯台に物資を運ぶ第七代「灯台補給船」となる。

❻ 1956 年(昭和 31 年)~ 1978 年(昭和 53 年)

「灯台補給船」から「巡視船」へと種別変更され、大改造を施された後、1962 年までは『南極観測船』(第 1 次 ~ 第 6 次)としての役割を担う。

❼ 1979 年(昭和 54 年)

海上保安庁に所属したまま「巡視船」として引退を迎えた【宗谷】は、 2021 年現在、東京都品川区にある「船の科学館」にて“海上保安庁唯一の保存船” として一般に展示公開されている。

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「海軍特務艦」としての【宗谷】

大日本帝国海軍の特別観艦式 Wikipedia より

1940 年(昭和 15 年)2 月 20 日、海軍の「特務艦」に編入された【地領丸】は同日付で新たに【宗谷】と命名されました。

【宗谷】の艦名は海軍では二代目だそうで、初代は日露戦争でロシアから奪った某巡洋艦だとか。

「特務艦」などといえば “極秘任務” を命じられたかのごとく聞こえはいいですが、二代目【宗谷】の役回りは『雑用運送艦』でした。

貨物船ながらも優れた砕氷能力・耐氷能力を持ちあわせ、また当時では珍しい英国製の最新ソナーを装備していたことから海軍上層部には早くから目を付けられていたようです。

「特務艦」時代の【宗谷】は人員の移送や物資の輸送、その他占領地周辺の測量など、危険地帯を行ったり来たりさせられながら数々の修羅場を味わうこととなります。

ちなみに、姉妹船の【天領丸】&【民領丸】は陸軍に徴用され、【天領丸】は昭和 20 年 5 月に、【民領丸】は昭和 19 年 2 月に、それぞれ米潜水艦の魚雷攻撃によって沈没しています。

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奇跡の船【宗谷】

【宗谷】“奇跡の船” と呼ばれるゆえんは、この「特務艦」時代に数多くの危機一髪を乗り越えてきたからに他なりません。

ミッドウェーやラバウルなど激戦地を転々とさせられていた【宗谷】は、そのつど米潜水艦や戦闘機・爆撃機の標的となり激しい攻撃にさらされました。

しかしながらすべて致命傷に至ることはなく、時には魚雷が命中したにもかかわらずたまたま不発だったため難を逃れた、なんてことも。

“濃霧” など自然現象で救われたこともあり、周囲の艦船が次から次へと撃沈されゆく中で、なぜか【宗谷】だけは神にでも守られているかのごとく毎回奇跡的に生還することができたのです。

「復員船」・「引揚船」としての【宗谷】

終戦直後の 1945 年 10 月、GHQ から大蔵省の管理下に移された【宗谷】は船名を【宗谷丸】と改め、国外に残された兵隊を日本に帰還させるための「復員船(復員輸送艦)として、主に東南アジア諸国へと出向きました。

復員任務が一段落した後は大蔵省から民間組織へと移籍され、国外の民間人を帰国させるための「引揚船」として、主に中国、朝鮮、樺太などへと出向き、累計 2 万人近い引揚者を運んだとされています。

ちなみに、この引揚時に【宗谷丸】の船内で誕生した女児が複数名存在するようですが、名付け親になった当時の船長はみな「宗子(もとこ)と名付けたようです。(苦笑)

なお、【宗谷丸】とは関係ありませんが、終戦直後の「復員」&「引揚」の様子が撮影された貴重な記録映像(カラー・無音)を発見いたしましたので、以下参考ばかりに貼り付けておきます。

【参考動画】

〖大竹の日本人引揚者 記録映像〗

約 22 分半
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「灯台補給船」としての【宗谷】

戦後約 4 年が経過し、GHQ より「引揚船」としての任を解かれた【宗谷丸】は、その後引退するまで一貫して海上保安庁に所属することとなります。

船名を再び【宗谷】に改め、1950 年(昭和 25 年)、必要な改装が施されたのち真っ先に与えられたのは、日本の津々浦々にある灯台やそれを管理する灯台守、及びその家族へ向けて必要な物資を輸送する「灯台補給船」としての任務です。

民間からチャーターしていた第六代「灯台補給船」を船主に返還しなくてはならなくなったため、その代船として急遽【宗谷】に白羽の矢が立てられたのでした。

今でこそ日本の灯台はすべて無人化されていますが、2006 年まではわが国にも “灯台守(とうだいもり) といった人達が存在していたのです。

北の果てから南の果てまで、灯台の多くは人里離れた厳しい環境に存在し、海に面した灯台への物資輸送は陸路に比べ船を使う方がより確実でした。

東京港を母校として、夏は北海道、秋は九州、といったように季節によってコースが定められており、灯台守やその家族からは「燈台の白姫」「海のサンタクロース」などと呼ばれ親しまれていたそうです。

「灯台守」についての詳細は以下記事にて

過酷な勤務地と生活実態 観音埼に始まり女島に終わった日本の灯台守
人の寄り付かない険しい島や岬の先端などで船の安全を見守り続ける灯台。それを住み込みで保全管理する人々が灯台守です。過酷な自然と孤独な環境を余儀なくされ、適応できずに発狂死する者も。今回は灯台の起源や歴史と併せ、今は無き日本の灯台守についてもご紹介。
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「巡視船」としての【宗谷】

【宗谷】南極への通常ルート Wikipedia より
第 2 次観測前の【宗谷】 Wikipedia より

約 5 年半「灯台補給船」として任務を全うした【宗谷】は、 “運の強さ” など様々な点から考慮された結果、初代『南極観測船』(種別は「巡視船」)へと大抜擢され、すぐさま大掛かりな改造が施されることとなりました。

そして 1956 年(昭和 31 年)の第 1 次観測から 1962 年(昭和 37 年)の第 6 次観測までの 6 年間、日本と南極との往復を繰り返しながら “タロジロ物語” など様々なドラマを築き上げ、【宗谷】の名は一気に日本全国へと広まりました。

その後、二代目『南極観測船』の【ふじ】へとバトンタッチして以降引退までの約 16 年間は、“海上保安庁最大の「巡視船」” として様々なイベント活動や救助活動、調査活動などで日本の海を東奔西走することとなります。

125 隻の船、1000 名以上の救助実績を上げ「海の守り神」とも呼ばれるようになりました。

「巡視船」の解役式に海上保安庁の長官自らが出席したのはこの【宗谷】のみ(2017 年時点で)だそうで、こうしたことからもこの船の偉大さが窺い知れましょう。

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最後に

【宗谷】「船の科学館」にて Wikipedia より

「奇跡の船」「不可能を可能にする船」「燈台の白姫」「海のサンタクロース」「福音の使者」「帝国海軍最後の生き残り」… etc

これら多数の愛称を持つことからも【宗谷】の深い歴史と愛されぶりがよくわかります。

記事作成にあたって参考にしたある資料〖国立国会図書館デジタルコレクション〗「太平洋学会誌」に、【宗谷】は日本人のお父さん” との例えが記されていました。

社命ひとつで各地を転々とさせられ、クタクタになりながらも一生懸命にコツコツと働く…

激動の昭和を生き抜き、陰に日向にと日本を支え続けた【宗谷】は、まさに “昭和のお父さん” そのものの姿に他なりません。

おん年 80 歳を回った彼は、現在東京都品川区にある「船の科学館」にてゆっくり過ごしてらっしゃいます。

入館料も無料ですし、興味のある方はぜひ一度足を運ばれてみてはいかがでしょうか ?

〖船の科学館 HP〗では【宗谷】“360 度バーチャル見学” (リアルな船内探検)や、ドローンによる空撮動画(下と同じもの)も楽しめますので、こちらもぜひオススメ !

【宗谷】空撮動画 〗

約 2 分

あと、どうでもいい話ですが…

純国産 “ダッチワイフ” として名高い「南極 1 号」は、当時の文部省が南極越冬隊員のために作らせたのがその名の由来なんだとか…

お堅い日本の省庁が我々の税金で “ダッチワイフ” を作らせただなんて、なんだか意外ですね。(笑)



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おすすめ映画

タロジロの感動の実話〖南極物語〗や、灯台守の厳しい日常を描いた〖喜びも悲しみも幾歳月〗は日本映画を代表する名作で、まだ見られたことのない方にはぜひオススメいたします。

古い映画ですが、両作品とも動画配信サービス「U-NEXT」にて現状(2021 年 12 月現在)タダでご覧になれます。
詳しくは以下記事にて



【おまけ】“昭和のお父さん” へ懐かしの映像プレゼント

〖「昭和20年代の子供たち」 当時の子供達の貴重な写真と映画から〗
「宗谷」とは何の関係もありません

約 31 分半
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アナトミアン

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